著作権について-(2)

  • それでは、続いて、事例3についてご説明しましょう。

    【事例3】 著作権の管理団体から社内外での文献複写に対して複写料の支払いを要求されている。どのように対応したらよいか。
(1)まず、管理団体とはいかなるものかについてご説明する必要があるようですね。現在3つの管理団体が届出をしております(日本複写権センター、学術著作権協会および日本著作権管理システム)。
2002年4月から、著作権管理事業法が完全に施行されております。これは、文献を使用または複写しようとしているユーザーがいちいち文献の著者に連絡し、使用および複写の許可を取り付ける不便さを解消するために、著者に代わって、複写や使用の受付窓口になり、複写料などを徴収する機関として、管理団体の立ち上げを推進するための法律と解釈してよいでしょう。 現在の3団体は主に学術文献を扱っており、学術文献の複写が最も多い分野である製薬企業を相手に複写料を徴収することから始めておりますが、特に製薬分野では医師や医療機関に対する公益的な目的使用(患者の生命に係る情報の提供)に対する徴収に対して、文化庁の著作権課に著作権法の改正(所謂、権利が及ばない制限列挙の中にいれるべきとの主張)の要望をしており、検討中であります。他に特許庁関連の文献複写についても当該制限の中に加えるべきとして、特許庁が文化庁と調整中とのことです。

ですから、製薬企業は当該管理団体と交渉しており、必要なものについては、個別の値段設定ではなく(各団体のHPをご参照ください。管理している文献毎に1頁あたりの複写料が記載されていますが、料金はまちまちであり、高いものは数千円/頁という法外なものもあり、下手すると、毎年数千万円以上の複写料を支払うことになります)、一律の値段にすべきとか、年間契約での一律支払いなどについて協議し、妥結したところは一応年間あたりでの複写料を支払っております。

しかし、問題なのは、当該管理団体が果たして、各文献における著者から本当に権利の譲渡を受けているのか、当該複写料が本当に各著者に合理的な条件で支払われているのかは定かではなく、製薬企業の団体が証拠の提出を促しても、頑として、証明しようとはしておりません。
また、当該3団体がカバーしている文献は全体の30%に充たず、なお70%の文献に対しては、各社はどのようにして複写料を支払ってよいのか不明確な状態のままになっております。文化庁著作権課でも、当該問題に対しては、真剣に取り組む姿勢をみせておらず、放置されたままになっております。
(2)上記のような状況の中で、管理団体から複写料の支払いの要求を受けた場合の対応として、
まず、社内で使用している文献とその複写の実態を調査すること(社内使用でも複写権を侵害していることになりますので、注意を要します)。1ヶ月間程度でよいですから、社内で学術文献等をよく複写する部門の複写機の横に箱を設置し、複写する文献のカバーおよび出版社がわかる頁を複写し、その表紙にX頁×Y部と記載してもらう。
できれば、社内の関連する部門のどこかで、当該データベースを作成しておくことも検討する必要があります。
ついで、社外利用の場合、これは、社外の場所(例えば、図書館など)で複写をしたり、複写業者に依頼したものを社内で使用する場合も、社内で複写した文献コピーを社外の人(例えば、医師・医療機関、商売先からの依頼を受けた場合)に手渡すことも社外利用として捕らえられるため、これらの実態を調査する必要があります。企業によって、社外利用のケースが多い場合には、上記のようにきちんとデータベース化して実態を把握しておくことが肝心といえましょう。
上記の実態調査の結果に基づき、使用している文献が、上記の3団体に帰属しているものか、学会に帰属しているものか、どこに帰属しているものか判明がつかないものかに分類する作業をしてください。各団体のHPに同団体が管理している文献名と各頁毎の複写料が記載されております。それにより、3管理団体に所属する文献の実態を把握しておいてください。
管理団体(上記のいずれか)ですが、日本複写センターは、もともと、国の方針により、文献の複写権を一括集中管理しておりましたが、管理能力などの問題もあり、現在では、雑誌全般についての社内利用について管理しておりますので、一般的に各会社の総務関係部門で当該センターと包括契約をして、年間あたりの使用料(5円程度/一人あたり)での支払いをしている企業が多いと聞き及んでおります。
上記以外の2団体のいずれかから、文献複写に対する支払い要求がきた場合には、まず、上記の実態調査を行い、自社内外での使用状況をベースに、実際に当該管理団体が管理している文献の複写の実態を把握してください。その結果、社内利用か社外利用(又は両方の場合)で年間の複写枚数が多いようでしたら、同管理団体と包括契約(個別の申請様式)を要求してくる可能性がありますが、上記にも述べましたように、各文献毎の複写料にばらつきがあり、それらをいちいち調べて報告する手間を考えれば到底当該要求は呑むことができないはずですので、できれば、包括契約で、1頁あたりの平均単価を決めて、複写枚数の年間概数を計算し、それにより年間複写料を割り出すような方式で話を進めることをお勧めします。
お勧めしたいのは、1社だけで交渉するのではなく、当該会社が属する企業団体に話を持ち込み、当該団体で窓口を決めて、当該管理団体と交渉することです。ただし、注意するのは、窓口は決めても最終的には各企業の判断に委ねることになりますので、各社できちんと、当該著作権(特に複写権)を理解し、正しい選択と意思決定ができるようにシステム構築を検討して欲しいと思います。
海外著作物についても文献複写の問題が生じていますね。でも、残念ながら、海外文献に関する管理実態が明確になっておりません。一応、米国の文献については、CCC(Copyright Clearance Center)が80%以上の文献をカバーしておりますので、ここと話をする必要があります。以前は、学術著作権協会がCCCから日本における窓口として認定されておりましたが、CCCにおける管理状況にも変化があり、現在のところ、日本における管理団体がどこか明確になっていないようです。 従って、海外文献等については、できるだけ、社内でデータベース化した電子文献をご利用になることをお勧めします。当該電子文献を扱う機関が別にありますので、当該機関が管理するデータの使用料を払って使用することもひとつの方策でしょう。


【事例4】 社内の研究者が論文を発表するが、当該論文については誰が権利を取得できるのか(本人か、会社か、論文を掲載する学会誌か)。

(1)社内の研究者が論文を作成した場合には、大抵は、下記の要件を充している限り、 職務著作となり、著作権は人格権以外は会社に帰属しますが、学会に発表したりする際に、特定の要件(つまり当該論文に対する著作権の帰属が当該学会に帰属することを条件とするような取り決め)が課される場合がありますので、このあたりも調べておく必要がありそうです。
職務著作となるためには、
著作権法で「第15条(職務上作成する著作物の著作者)
1.法人その他の使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。」
と定めされており、上記の中の、1)法人等の発意に基づくものであること、2)法人等の業務に従事する者であること、3)職務上であること、4)法人等が自己の名義で公表するものであること、5)作成時の契約、勤務規則その他に別段の定めがないことの要件を充足していれば、会社に帰属することになります。
(2)上記の場合、会社などでの研究成果を学会等に発表することは問題ないのですが、 会社以外の機関(社団法人、財団法人、学校法人等)については、ここにいう法人格があるのかどうか、職務著作となりえるのかどうかの判断については、著作権法上では、「法人格を有しない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものを含む」とされており、大学でも国立大学は独立行政法人化以降はこの規定に該当するものと思われます。
(3)ただし、学会等に発表後の著作権の帰属については、微妙です。ある学会では、論 文を寄稿する際に、規定を設けて、掲載の要件の1つとして、当該論文の著作権は学会に帰属すると明確に打ち出しているところもありますが、多くの学会では、まだ、このような明確な規定を設けていないところもあり、1つ1つ調査しないと実態が掴めない状況にあります。 また、職務著作でも、会社によっては、当該論文をオープンにしており、当該論文を引用または転載することに対しても権利主張しないと公表しているところもあります。

(以上)

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