【ブラジル】特許権の存続期間を出願日から20年に限る、ブラジル連邦最高裁判所判決

2021年08月

ブラジル産業財産権法第40条では、特許権の存続期間は出願日から20年とされています。しかし、同法第40条補項において、特許権の存続期間は特許付与日から10年未満であってはならないと規定されています。

したがって、審査の遅延により特許付与が遅れた場合は、出願日から20年を超えて存続期間が認められるケースがありました。

しかし、第40条補項により長期の存続期間が認められた場合、例えば、ジェネリック医薬品の開発を阻害し、薬価の高騰につながり、国民の利益に反すること、また、特許がいつ付与され特許権がいつ消滅するのか、第三者の予見を困難にし、法的安定性を損ねること等から、この規定は違憲であるとの議論がかねてからありました。

そこで、ブラジル連邦最高裁判所(STF)にその判断が委ねられ、2021年4月7日に仮処分が発行されました。その内容は、2021年4月8日以降に付与される医薬品等の特許については、出願日から20年を超える存続期間を認めないものとする。但し、既に付与された特許については、(STFが最終的に異なる判決を下さない限り)この仮処分の影響を受けないものとするというものでした。

その後、2021年5月6日、STFは、第40条補項は、違憲であるとの判決を下しました。原則として、このような違憲判決が下されると、その拘束力は全技術分野の特許出願及び既に付与された特許すべてに及びますが、その影響の大きさから、この判決の拘束力の調整ついて、更なる話し合いがなされました。

そして、2021年5月12日、STFは、上記判決の拘束力の及ぶ範囲について、以下の判断を示しました。

1.

原則として、判決文の公表日である5月13日以降に付与される、全ての技術分野の特許について、その特許権の存続期間は出願日から20年を超えないものとする。

2.以下の①及び②に該当する場合は、既に付与された特許の権利期間が、遡及的に出願日から20年に短縮される。
2021年4月7日までに、無効の申立がされていた全ての技術分野の特許
現在有効であり出願日から20年を超える存続期間が認められた、「医薬品、医薬品の製造方法、医療機器および/または材料」に係る特許

ブラジル産業財産庁(INPI)の発表によりますと、出願日から20年を超える存続期間が認められている特許の件数は全体で30,648 件であり、このうち3,435件 (約11.21%) が今回の判決の影響を受け、残りの 27,213件 (約88.79%) は影響を受けないようです。

また、短縮された期間に対して、既に支払われた実施料については、特許権者に払い戻しの義務はないとされています。