【ドイツ】特許法改正案、ドイツ連邦参議院で承認

2021年09月

ドイツ連邦参議院(Bundesrat(上院に相当))は、2021年6月25日に特許法改正案(特許法の簡素化及び現代化のための第二次法案)を承認しました。
今後、この法案は大統領による署名を経て法律として公布・施行されます。
尚、下記項目1につきましては、公布の翌日から施行され、2と3につきましては、公布の9か月後から施行される予定です。

主な改正点は以下の通りです。

1.差止による救済の制限
これまで、ドイツでは特許権侵害が認められると、たとえ侵害者が不相当な不利益を被る場合であっても、何ら制限無く差止が認められてきました。
しかし、2016年5月10日、連邦最高裁判所は、特許権者による差止請求権の行使が、特許権者の利益に鑑みても侵害者に対して不相当に苛酷なものとなり、そのため信義に反するものとなるような場合には、差止の延期(猶予期間)が認められるべきであると判示しました(Wärmetauscher事件)。

このような背景を受け、今回の改正では、差止が不均衡な結果を生じる場合、すなわち特段の事情により、特許権者と侵害者の利益、及び信義則を考慮すると排他権が正当化されないと認められる限りにおいては、差止による救済が制限されることが明示されました。
また、差止が制限される場合、特許権者は、合理的な額の金銭的補償を要求することができ、この要求は損害賠償請求を妨げない旨の規定が追加されました (第139条(1))。

2.侵害訴訟と無効訴訟のダブルトラック問題への対応
一般論として、ドイツでは侵害訴訟は早期(約1年~1年半)に解決しますが、無効訴訟には時間がかかります。このため、一旦侵害訴訟で差止が認められたものの、その後に特許が無効とされたり、無効訴訟中の訂正によって非侵害に変わったりするという問題がありました。
このような、いわゆるダブルトラック問題への対策の一環として、無効訴訟の被告(特許権者)への訴状送達から6ヶ月以内に、連邦特許裁判所が特許の有効性等に関する予備的な見解書を当事者及び侵害訴訟の裁判所に通知する規定が追加されました(第83条(1))。

3.PCT出願のドイツ国内移行期限の延長
PCT出願のドイツの国内段階への移行期限が、優先日(出願日)から30か月であったところ、欧州特許条約の規定に合わせて、31か月に変更されます。


編集後記:上記改正法案は、大統領による署名を経て、2021年8月17日に法律として公布されました。1の施行日は2021年8月18日、2と3の施行日は2022年5月1日です。