【韓国】韓国型証拠収集制度導入予定
2024年03月
韓国には証拠収集制度が設けられていないため、侵害訴訟で特許権者等が侵害行為を立証するための証拠の確保が困難であり、特許の保護が不十分であるとの指摘がかねてよりありました。
また、2019年に施行された懲罰的損害賠償制度や2020年に改正された損害賠償額の算定方式の実効性を確保するためにも、侵害者が持っている証拠を容易に入手できる方法の確立が必要であるという意見がありました。
そこで、韓国特許庁(KIPO)と国会は、2020年から韓国の現状に適した「韓国型証拠収集制度(K-ディスカバリー)」の導入を進めてきました。
今般公表された「韓国型証拠収集制度」最終案には、①裁判所から指定を受けた専門家が侵害場所で侵害の立証及び損害額の算定に必要な資料を調査し、それをまとめた結果報告書を証拠として活用する専門家事実調査、②裁判所が当事者に証拠の滅失と毀損防止を命令する資料保全命令、③裁判所職員の立会いのもと、法廷外で、当事者が証人の尋問を行い、その記録を証拠として活用する当事者間証言録取、④専門家事実調査で知得した事実に対して専門家に秘密保持を課す専門家の秘密保持規定の導入が含まれます。
最終案では、産業界の意見を反映して、専門家事実調査の開始要件を厳格化し、特許権の「侵害可能性」を「相当な侵害可能性」とするとともに、証拠を収集する他の手段がない場合にのみ専門家事実調査を開始できるという限定を設けています。また、被調査者の防御権を保障するため、被調査者は専門家事実調査の開始決定に対して意見陳述を行うことができ、専門家を忌避することも可能としています。更に、専門家による営業秘密の漏洩が生じた場合の罰則も強化して被調査者の防御権保障に配慮したものとなっています。
今後、KIPOは最終案に対する業界及び専門家の意見をまとめた上で、立法手続きに入る予定です。