【ブラジル】INPI、化学分野特許審査ガイドライン第9章の改訂版を公表
2026年07月NEW
ブラジル産業財産庁(INPI)は、2026年6月30日付官報(Official Gazette No. 2895)においてOrdinance No. 80/2026を公布し、化学分野特許審査ガイドライン第9章(Resolution No. 208/2017により定められていた既知物質の新規用途に関する審査基準)の改訂版を公表しました。
本改訂は、2025年7月から実施されていた意見募集を経て取りまとめられたものです。当初の改訂案につきましては、弊所知財トピックス(2026年5月掲載)にてご紹介しておりますので、詳細は以下をご参照ください。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/19055/
第二医薬用途発明の特許適格性、スイス型クレーム形式の許容、新規性を新規治療用途に基づいて判断する基本的な枠組みについては、従来の取扱いに変更はありません。
一方、当初案で示されていた「出願時点でin vivo実験データを備えていることを必須とする」要件は最終版では採用されませんでした。もっとも、出願時点において治療用途を裏付ける証拠を備えていること自体は引き続き求められており、in vivo試験が最も有力な証拠として位置付けられる点に変わりはありません。in vitro試験、ex vivo試験、in silico試験(コンピュータによる解析・シミュレーション)および理論的考察についても、治療用途を十分かつ明確に裏付けるものであればケースバイケースで考慮され得るとされていますが、単なる仮説や予備的な結果のみに基づく出願については、従来以上に開示不十分と判断されやすくなるものと考えられます。
また、出願後に提出される補完実験データについては、出願時の明細書に開示された内容に基づき、既に記載された作用効果を裏付けるものである限り、補足証拠として認められることが明確化されました。さらに、マーカッシュ形式などにより複数の化合物を包括的に特定したクレームについては、代表化合物の実験データにより開示の十分性を満たし得るとの判断基準が示されています。
一方、治療レジメン(用法・用量、投与経路、投与間隔)や患者群の限定は、それ自体では第二医薬用途クレームの新規性を基礎付けるものではないことが、ガイドライン上明文化されました。これは従来の審査実務を明文化したものと考えられます。
さらに、新規性欠如、進歩性欠如、開示要件違反および明確性要件違反に関する具体例が大幅に追加されており、審査実務の予測可能性が向上する一方で、審査基準の運用については従来よりも解釈の余地が限定されることが予想されます。
なお、今回の改訂は、意見募集段階の当初案と比較すると緩和された内容となっていますが、2017年のResolution No. 208/2017との対比では、出願時点における証拠の裏付けや治療レジメン・患者群の取扱いについてより具体的かつ厳格な基準が明文化されたものであり、実務上は審査のハードルが総じて上がったものと捉えるべき側面もあります。

