【欧州】欧州特許庁(EPO)、本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物に関する審査及び異議申立手続の停止(stay)を公表

2017年02月

(1)2016年12月12日、EPOは、「本質的に生物学的な方法によって生産された植物又は動物の発明」に関して、審査部および異議部での手続を職権で停止する決定を公表しました。この決定は即日発効しました。

今回の決定により手続が停止される案件については、審査部又は異議部から、当事者に対してその旨通知されると共に、すでに発行されたオフィスアクションの応答期限が取り消されます。手続が再開されるまで、新たなオフィスアクションは発行されません。なお、サーチ業務は今回の停止の影響を受けません。

(2)今回のEPO決定は、バイオテクノロジー発明の法的保護に関する1998年7月6日の欧州議会及び理事会指令98/44/EC (所謂“Biotech Directive”、以下「バイオ指令」という)の解釈に関して、2016年11月3日に欧州委員会が公表した通知に鑑みてなされたものです。

(3)これまでのバイオ指令及び欧州特許条約(EPC)の規定(EPC第53条(b))では、「本質的に生物学的な方法」は特許の対象外とされてきましたが、「本質的に生物学的な方法によって生産された“物”」についての、明確な規定はありませんでした。

2016年11月3日に欧州委員会通知が公表された背景の概要は、次の通りです。
EPO拡大審判部が2015年3月の審決G2/12及びG2/13で「本質的に生物学的な方法によって生産された物それ自体は特許の対象となり得る」旨を示しました。
これに対して、欧州議会は、2015年12月にバイオ指令の解釈を明確にすることを欧州委員会に求める決議を採択しました。この決議及びその後の専門家グループによる最終報告書等に基づき、今回の欧州委員会通知が作成され、2016年11月3日付で公表されました。
この欧州委員会通知では、バイオ指令の策定趣旨に立ち返れば、「本質的に生物学的な方法によって生産された物」それ自体も特許の対象外とすべき、との解釈が示されています。

(4)今回の欧州委員会通知がEPO審査に及ぼす効力について、現在EPOは、どのように対応すべきかを含めて欧州特許機構の構成国と検討中です。仮に欧州委員会通知によるバイオ指令の解釈に構成国が従うのであれば、EPOは、自らの審査実務に同解釈を適用することになるだろう、と述べています。

当該欧州委員会通知の全文は、下記サイトで見ることができます:

http://ec.europa.eu/DocsRoom/documents/19622