【中国】最高人民法院による専利の権利付与・権利確認の行政事件の法律適用に関する若干問題の規定(一)

2020年12月

「最高人民法院による専利の権利付与・権利確認の行政事件*1の法律適用に関する若干問題の規定(一)」法釈〔2020〕8号が2020年8月24日最高人民法院審判委員会第1810回会議にて可決され、2020年9月12日に施行された。ここで、今回の法釈〔2020〕8号の内容の概要を紹介する。なお、正確な内容は法釈〔2020〕8号の条文(こちら)をご参照ください。

 第1条は、用語「専利の権利付与行政事件」、「専利の権利確認行政事件」及び「被訴決定」について定義する。
 第2条は、請求の範囲の用語は、明細書等の記載等から特定し、所定の場合、当業者が通常使う道具書などを参酌して特定できると規定する。
 第3条は、無効審判の審決取消訴訟で、専利権侵害事件の発効裁判で採用された専利権者の関連陳述は、請求の範囲の用語の特定に参酌できることを規定する。
 第4条は、明細書等における明らかな誤り等の場合、当業者が一義的に理解できるもの(唯一の理解)に基づいて認定すべきと規定する。
 第5条は、信義誠実の原則に違反して明細書等の技術内容の虚構、捏造が当事者によって立証された場合、当事者の専利法関連規定違反の主張は支持される旨規定する。
 第6条は、専利法第26条第3項違反(公開不充分要件違反、すなわち実施可能要件違反)の場合について規定する。また専利法第26条第3項違反のみに基づいて、該特定の技術内容に関連の請求項が専利法第26条第4項のサポート要件を満たすと主張しても支持されない旨規定する。
 第7条は、専利法第26条第4項の明確要件違反の場合について規定する。
 第8条は、当業者が明細書等の記載に基づいて請求項に係る発明が得られず(実施できず)、概括できない場合は、サポート要件違反に該当する旨規定する。
 第9条は、機能または効果によって特定された技術特徴(発明特定事項)について定義する。また機能または効果によって特定された請求項に係る発明が専利法第26条第3項違反(公開不充分要件違反)と認定される場合について規定する。
 第10条は、医薬専利について、出願日後に提出され追加実験データにより、進歩性、または実施可能要件の主張に対して、裁判所は審理しなければならない旨規定する。
 第11条は、当事者が実験データの真実性に争われた場合に、実験データを提出する側の当事者に挙証責任がある旨、実験の責任者に説明させることができる旨規定する。
 第12条は、請求項に係る発明の技術分野の特定に考慮されるべきことを規定する。
 第13条は、相違点によって奏される技術効果が明細書等に明確に記載されていない場合、当該請求項の実際に解決した技術課題の認定について規定する。
 第14条は、一般消費者の有する知識レベル及び認知能力の認定は、出願時の意匠製品の設計空間を考慮すべき旨規定する。また、前記設計空間の認定が総合的に考慮されるべき要素を具体的に規定する。
 第15条は、意匠の図面、写真が不鮮明に起因して、保護を求めようとする意匠を特定できない場合は、専利法第27条第2項の明確要件違反と認定される旨規定する。
 第16条は、意匠が専利法第23条の規定を満たしているか否かの認定は、意匠の全体的視覚効果を総合的に判断すべき旨規定する。機能を確保するための意匠特徴(構成)は視覚効果の全体的観察及び総合的判断に顕著な影響を及ぼすものではない旨規定する。
 第17条は、物品の同一または類似の従来意匠が、意匠の全体視覚効果が同一または微差しかない実質同一の場合は、従来意匠と認定される旨規定する。また両者の相違点が全体的視覚効果に対して顕著な影響を及ぼさない場合は明確な相違点を有しないと認定され、物品の同一、類似は意匠に係る物品の用途に基づいて認定される旨規定する。
 第18条は、専利法第9条(先後願)の同一性の判断について規定する。
 第19条は、専利法第23条第1項の「同一の意匠」(拡大先願)について規定する。
 第20条は、意匠の示唆について規定する。
 第21条は、独特な視覚効果の認定に考慮される要素について規定する。
 第22条は、専利法第23条にいう「合法的権利」について規定する。
 第23条は、専利復審、無効宣告請求審査手続において、行政訴訟法第70条第3項の「法定手続違反の場合」に該当する場合について規定する。
 第24条は、部分取消と判決できる場合について規定する。
 第25条は、被訴決定を取消または部分取消の場合について規定する。
 第26条は、審査決定が発効裁判を直接依拠して改めて行われたものについて、一定の条件を満たした場合は不受理と裁定する旨規定する。
 第27条は、被訴決定に法律の適用等に不当があっても、専利の権利付与・権利確認の認定結論が正しければ、原告の訴訟請求は棄却され得る旨規定する。
 第28条は、裁判所は、慣用技術または慣用意匠を主張する者に証拠の提供または説明を求めることができる旨規定する。
 第29条は、審決取消訴訟において新たな証拠により、出願は拒絶されるべきでないまたは専利権は有効であることを証明する場合、裁判所は原則として審理すべきである旨規定する。
 第30条は、無効審判の審決取消訴訟での新たな証拠の提供は原則として審理されないが、限定された例外の場合を規定する。
 第31条は、当事者が提供した証拠であっても採用されない場合について規定する。
 第32条は、施行日が2020年9月12日であることを規定する。


*1中国における「専利の権利付与・権利確認の行政事件」は、日本の審決取消訴訟事件に相当する。