【中国】中国の集積回路配置設計保護条例が改訂され、2026年10月15日より施行へ
2026年08月NEW
2026年8月3日に、集積回路配置設計保護条例(以下「条例」という)が改訂・公布されました。今回の条例の改訂は、2001年に公布されて以来、初めての改訂です。今回の条例の改訂には、保護対象の拡大、第三者による登録取消の請求、創作配置設計の報償に関する規定の追加、専利権侵害の損害賠償関連規定の改訂(損害額の算定方法、懲罰的賠償)、信義誠実原則の導入、権利の回復、公衆閲覧の導入等が含まれています。改訂条例は2026年10月15日より施行されます。
なお、改訂された条例は、2026年5月1日に発行された書籍『中国知的財産関連法令集』の中の第14番の条例である「⑭集積回路配置設計保護条例」を改訂したものであり、その施行日の2026年10月15日から改訂された条例に差し替えます。
改訂された集積回路配置設計保護条例の日本語翻訳文はこちらから。
一、保護対象
1.保護対象の拡大
今回の改訂は、「集積回路」に対する定義規定から「半導体集積回路をいい」という文言が削除されるとともに、新たに「光子、量子等の機能を集積した集積回路の配置設計は、この条例の規定に基づいて保護することができる」(条例第3条第2項)との規定が追加され、光子、量子等の機能を集積した集積回路の配置設計も保護されることが法的に明確にされました。
その背景として、光子、量子情報とマイクロエレクトロニクス技術の高度な融合、光電融合、シリコン光子集積、量子チップ等の最先端技術の急速な進化に伴い、関連製品の機能的次元がすでに従来のシングルモードの電子信号処理の範囲を超えており、従来の集積回路の定義では、創新(イノベーション)の保護が難しくなってきています。また、2022年から中国において光子、量子デバイスが含まれる集積回路配置設計登録の申請件数が増加しており、2024年以降は、複数件をまとめて申請する傾向がみられるようになりました。
2.保護対象の特定
今回の条例改訂では、保護対象を明確に特定するための条文がいくつか追加されました。申請書類の複製物又は図面には、集積回路配置設計(以下「配置設計」という)に関する必要な情報を含む必要がある(条例第23条)こと、独創性声明には、配置設計における独創性を有する設計の領域、設計要点及び対応する機能を明記する必要があること、配置設計が全体として独創性を有する場合は、独創性声明においてその旨を具体的に説明する必要がある(条例第24条)ことが新たに規定されました。申請人には配置設計において最も商業的な価値を有する独創的な部分を明確に特定できるようにすることが求められます。
また、配置設計の保護範囲の特定についても明確な基準が示されました。「保護を受ける配置設計は、登録された配置設計の複製物又は図面を基準とし、独創性声明は配置設計の独創性の解釈に用いることができる」(条例第34条)との規定が追加されました。
条例の改訂により、配置設計がより明確に特定できるようになる一方で、そこまで明確に開示したくない申請人も少なくありません。そのため、実務では、配置設計の登録を受けるようにするか、それともノウハウにするかを悩む場面が増え、戦略的にいずれを選択するかが課題になるかもしれません。
3. 配置設計の複製物又は図面の電子データの閲覧と複製の禁止
配置設計の複製物又は図面については、紙の書面の閲覧を請求できるが、複製物又は図面の電子データについては、原則として閲覧又は複製することが禁止されています。ただし、訴訟又は行政処理手続等において、国の機関が法による職務の遂行のために必要とする場合に限り、例外としてその電子データの閲覧と複製が許されます(条例第50条)。
二、配置設計の登録の取消し
配置設計専有権として保護を受けるには、国家知識産権局による登録を受ける必要があります(条例第12条)。登録された配置設計が条例の規定を満たさないことを発見した場合は、職権により登録が取り消されます。それに加え、今回の改訂により新たな条項が追加され、第三者(何人)も、国家知識産権局に配置設計登録の取消しを請求することができるようになりました(条例第30条)。
三、創作配置設計の報償制度の新設
創作配置設計の報償と報酬の方法、金額等については、「中華人民共和国科学技術成果転化促進法」及び関連する国の規定が直接適用され、約定優先の原則が採用されました。約定がない場合は、「中華人民共和国科学技術成果転化促進法」第45条によると、「(一)当該職務科学技術成果を他人に譲渡し、実施を許諾した場合は、当該科学技術成果の譲渡又は許諾による純収入から50%以上の割合で引き出すこと、(二)当該職務科学技術成果をもって評価投資した場合は、当該科学技術成果によって形成された持分又は出資の比率から50%以上の割合で引き出すこと、(三)当該職務科学技術成果を自ら実施するか、又は他人と協力して実施する場合には、転化の実施を成功し生産開始後、連続して3年間から5年間まで、毎年、当該科学技術成果の実施による営業利益から5%以上の割合で引き出すこと」が報奨と報酬の基準となります。
中国に子会社を有する日本の企業は、発明等に関する報奨と報酬について、関連する雇用契約、就業規則、発明等規程において、事前に約定しておくことがより重要になります。関連する約定の有無について、一度確認した方がよいかもしれません。
四、専利権侵害の損害賠償の規則
懲罰的賠償を含む損害額の算定方法についての規定(条例第46条)が新設されました。なお、条例第46条における「当該配置設計の使用料の倍数を参酌して合理的に決定する」との文言は、懲罰的なものではないことに留意が必要です。
「故意に配置設計専有権を侵害し、情状が重い場合は、上述の方法により決定した額の1倍以上5倍以下の範囲内で決定することができる」の部分が懲罰的賠償に関する規定です。懲罰的賠償の導入により、配置設計の保護が強化されます。
五、その他
今回の条例の改訂では、さらに、配置設計の登録の申請及び配置設計専有権の行使に信義誠実原則の遵守(条例第9条、条例第20条)、権利の回復(条例第33条)、公衆閲覧(条例第50条)に関する条項等が追加されました。
参考情報
・ニュース報道:「集積回路配置設計保護条例」に改訂について、司法部、国家知識産権局の責任者による記者会見(2026年8月3日)
(https://www.news.cn/politics/20260803/147d8ed988c341bf9e624df21a020aaa/c.html 2026年8月21日最終閲覧)。
・黄蘊華「我が国集積回路配置摂家保護制度の大きな改正」中国司法部の公式サイト(2026年8月3日)(https://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/zcjd/202608/t20260803_538196.html 2026年8月21日最終閲覧)
・崔国斌「我が国集積回路配置摂家保護制度の最新の発展」中国司法部の公式サイト(2026年8月3日)(https://www.moj.gov.cn/pub/sfbgw/zcjd/202608/t20260803_538197.html 2026年8月21日最終閲覧)

