【欧州】UPC控訴裁判所、特許付与前に提起された非侵害確認訴訟について管轄異議を退ける―許容性はなお未判断、オプトアウトは早期申請が重要―

2026年11月NEW

統一特許裁判所(UPC)控訴裁判所は、2026年9月21日付のOmnia対Sidel事件の命令(UPC-CoA-90/2026)において、特許付与前に提起された非侵害確認訴訟について、付与前の提起を理由とするUPCの管轄欠如の予備的異議を退けた第一審の結論を維持しました。他方、当該訴えが特許付与前の提起ゆえに許容されるかどうかは、後続手続で判断されるべき問題として残されました。

本命令は、欧州特許出願の公開から特許付与までの期間であっても、第三者によるUPCへの非侵害確認訴訟の提起が後行のオプトアウトを妨げ得ることを示しました。ただし、このように付与前に提起された訴えが最終的に許容されるかどうかは、なお未判断です。UPCの管轄を回避したい出願人・特許権者にとって、オプトアウトはできるだけ早期に検討することが重要であることが改めて示されました。

1. 背景
本件(第一審:UPC_CFI_799/2026)では、第三者が、まだ特許として付与されていない2件の欧州特許出願を対象として、UPCに非侵害確認訴訟を提起しました。これに対し、出願人側はその後オプトアウトを申請しましたが、裁判所は、すでにUPCで訴訟が開始されていたことから、その後オプトアウトは効力を有しないと判断しました。

2. 命令のポイント
控訴裁判所は、特許付与前の欧州特許出願に関する非侵害確認訴訟について、UPC協定第32条に基づく管轄(competence)の問題と、訴えの許容性(admissibility)の問題を区別しました。

裁判所は、Omniaの請求を、将来付与される特許についての非侵害確認を求める請求と性質付け、これはUPC協定第32条(1)(b)が定めるUPCの管轄に属する訴訟類型であるとしました。したがって、訴訟提起時に特許が未付与であったことのみを理由として、UPCの管轄が否定されるものではないと判断しました。

他方、特許付与前の提起が時期尚早であり、訴えが許容されないかという点は、管轄の問題ではなく許容性の問題であるとしました。この問題はRoP Rule 19に定める予備的異議の対象ではないため、第一審における後続手続で判断されるべきとされました。したがって、付与前に提起された非侵害確認訴訟が最終的に許容されるかどうかについて、控訴裁判所は判断していません。

3. 実務上の示唆
本命令では、UPCでの訴訟提起後にオプトアウトを申請しても効力を生じないと判断されました。特許付与前の出願段階でも、第三者による訴訟提起がオプトアウトに影響するため、UPCの管轄を回避したい出願人・特許権者は、特許付与を待たず、出願公開後できるだけ早期にオプトアウトを申請することが重要です。
もっとも、特許付与前の非侵害確認訴訟が最終的に許容されるかどうかについてはまだ結論が出ておらず、今後の動向に留意する必要があります。