【ブラジル】国家緊急事態時等における強制実施権設定に関する法改正

2021年12月

強制実施権に関するブラジル産業財産法の改正法案が大統領の承認を経て、法律第14,200号として、2021年9月2日に施行されました。
ブラジルでは産業財産法第71条で、「連邦行政当局の決定により国家緊急事態または公共の利益に関する事態と宣言された場合、特許権者または実施権者がそれに係わる必要を満たさないときは、特許権者の権利を損なわないことを条件として、職権により、その特許を実施するための一時的かつ非排他的使用を認める強制実施権を付与することができる」と定めています。
コロナ渦対策として、コロナ関連特許に対してより柔軟に強制実施権の設定を可能とするべく、この71条の改正法案が提出されました。しかし、最終的にはコロナ関連特許に限定せず、国内または国際的な緊急事態時、災害時、または公共の利益につながるすべての場合に改正法(法律第14,200号)が適用されることとなりました。

改正法の概要
1. ブラジル国内または国際的な緊急事態時、災害時、または公共の利益の為に、いつでも強制実施権が直ちに設定され得る。この場合、行政庁による、特許権者が特許製品に対する要求(必要)を満たしていない証拠の提示を必要としない。

2. 上記の事情に鑑み、行政庁は強制実施権設定の対象となり得る特許リストを公開し、公的・私的法人等は強制実施権の設定を請求することができる。

3. ブラジル国内の要求(必要)を満たしている、または自主的に実施権を許諾した特許権者は、その特許をリストから除外することを要求できる。

4. 強制実施権が設定された特許に関する秘密情報を所有している公的機関は、その情報を開示する義務があり、営業秘密保護条項は適用されない。
(例えば、医薬品の製造販売承認取得のため、国家衛生監督庁(ANVISA)に提出した情報がこれに該当します。)

5. ロイヤルティ率は、暫定的に製品の純売上高の1.5%に固定されるが、今後変更される可能性がある。

6. 強制実施権設定以外にも、行政庁は、特許権者に対して、自主的なノウハウ・ライセンス契約締結について交渉することができる。

7. 発展途上国の要求(必要)に応えるための輸出についても強制実施権を設定することができる。

改正法についての公報(ポルトガル語)は以下のURLからご参照頂けます。}https://drive.google.com/file/d/1FRuuK2cOYqx1GuQhaPxYAIvZ2wzYhrl9/view?form=MY01SV&OCID=MY01SV