【欧州】欧州特許庁(EPO)2021年度の年次レビューを公表

2022年10月

欧州特許庁(EPO)は、2022年6月29日に、2021年次レビュー(Annual Review 2021)を公表しました。
https://www.epo.org/about-us/annual-reports-statistics/annual-report/2021.html

2021年次レビューでは、EPOの「戦略計画2023」の5つの目標それぞれの成果が紹介されている他、品質レポート、環境維持レポート、ITレポート等、主要分野の詳細な活動報告が付属レポートとして掲載されています。

「戦略計画2023」とは、2019年6月に採択された4か年計画であり、以下の5つの目標を掲げています。
目標1「熱意に満ち、知識が豊富で、かつ協力的な組織の構築」
目標2「ITシステムの簡素化及び近代化」
目標3「高品質の成果物及びサービスの効率的な提供」
目標4「グローバルな影響力を有する欧州特許システム及びネットワークの構築」
目標5「長期的な持続可能性の確保」

2021年次レビューによりますと、コロナ禍にもかかわらず、EPOは「戦略計画2023」を推し進め、開始からわずか2年半後の2021年末時点で4か年計画の約71%がすでに完了しています。
その成果の内、特筆すべき事項を、以下にまとめました。

目標2:「ITシステムの簡素化及び近代化」に関して
2021年末までに、審査官と方式担当者等とのやりとりのためのインターフェースである特許ワークベンチ(Patent Workbench)プラットフォームが、特許手続きワークフローの99%以上をカバーするに至りました。
また、WebベースのオンラインサービスであるMyEPOポートフォリオの試行運用が開始されました。MyEPOポートフォリオの利用により、出願人等は、オンラインで、出願ポートフォリオをチェックし、必要な手続き等を行うことができます。

目標3:「高品質の成果物及びサービスの効率的な提供」に関して
EPOは、高品質の成果物を提供するため、幅広いユーザーとコミュニケーションを図り、ユーザーからのフィードバックに応えるように努めてきました。
また、デジタル化について、いくつかの改善が見られました。
例えば、2021年7月、EPOは、庁内のAIベース事前分類(pre-classification)エンジンを構築し、2021年の後半には、50,000件以上の欧州特許出願およびPCT出願を審査官に割り当てる際に、このエンジンが利用されるようになりました。
また、デジタル化により、ビデオ会議による口頭審理(VICO)が可能となり、現在、審査及び異議申立における口頭審理は原則として、ビデオ会議により行われています。EPOは、2021年9月1日から30日の1か月間、異議申立におけるVICOについてのユーザー調査を行いました。調査の結果、700人の回答者の約3分の2は、VICOの提供について「良い」または「非常に良い」と評価しました。

審査・審判等の主要な業務成果に関して
審査・審判等の主要な業務成果につきましては、弊所知財トピックス2022年7月掲載分(2021年の年次統計(Patent Index))をご参照下さい。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/11670/