【欧州】EPO審判部、「公衆に利用可能」の解釈を拡大審判部に付託(G1/23)

2023年08月

2023年6月29日、欧州特許庁(EPO)は、技術審判部3.3.03が中間審決(T483/19;「solar cell」事件)において、EPC第54条(2)(新規性)における「公衆に利用可能」の文言解釈について、拡大審判部に質問を付託した旨公表しました。
https://www.epo.org/law-practice/case-law-appeals/communications/2023/20230629_de.html

付託された質問は以下の3つです。
1. 欧州特許出願日前に上市された製品は、その組成又は内部構造を出願日前に当業者が過度の負担なく分析及び再生産することができなかったという理由だけで、EPC第54条(2)(新規性)の意味における先行技術から除外されるか?
2. 質問1の答えがnoである場合、当該製品の組成又は内部構造が出願日前に当業者によって過度の負担なく分析及び再生産が可能であったか否かにかかわらず、出願日前に(例えば、技術パンフレット、非特許文献又は特許文献等により)公衆に利用可能となった当該製品に関する技術情報は、EPC第54条(2)の意味における先行技術となるか?
3. 質問1の答えがyes又は質問2の答えがnoである場合、製品の組成又は内部構造を拡大審判部審決G1/92の意味において過度の負担なく分析及び再生産できたか否かを判断するためには、どのような基準を適用すべきか。製品の組成及び内部構造が完全に分析でき、かつ同一のものを再生産できることが要求されるか?

先行する拡大審判部審決G1/92では、「製品の化学組成は、その組成を分析するための特別な理由が特定できるか否かにかかわらず、製品が公衆に利用可能であり、当業者によって分析及び再生産が可能である場合、先行技術となる」とされました。しかし、G1/92から30年の間に、この文言が様々に解釈され、特に、「公衆に利用可能」というには同一のものを再生産できることまで求められるのか否かが論点となっていました。この点は、新規性の判断に大きな影響を与えます。そこで、「公衆に利用可能」の法的解釈を明確にするため、上記3つの質問が拡大審判部に付託されました。