【ブラジル】特許期間調整(PTA)に関する画期的な判決
2025年05月NEW
2025年5月12日、ブラジルの第4連邦民事裁判所(4th Federal Civil Court)は、特許期間調整(Patent Term Adjustment:PTA)訴訟において、初めて、ブラジル産業財産庁(INPI)の不合理な遅延を理由に、特許権者のPTA請求を認めました。
2021年5月12日、ブラジル連邦最高裁判所(STF)は、産業財産権法第40条の「特許権の存続期間は特許付与日から10年未満であってはならない」とする規定は違憲であり、特許権の存続期間は出願日から20年を超えないと判事しました。
当判決に従い、「医薬品、医薬品の製造方法、医療機器および/または材料」に係る特許については、既に付与された特許の権利期間が、遡及的に出願日から20年に短縮されました。
詳細につきましては、弊所知財トピックス2021年8月掲載分をご参照ください。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/10027/
これを不服とした特許権者は、INPIに起因する遅延に対して調整を受ける権利があると主張し、訴えを提起しました。
現地代理人の情報によりますと、2025年5月までに、67件のPTA訴訟が提起され、判決が下された31件のうち、本件のみがPTAを認められ、他の件は請求が却下されました。
本件訴訟(訴訟番号1088996-39.2021.4.01.3400)は、ジェンザイム・コーポレーション(Genzyme Corporation)とミシガン大学の理事会(The Regents of the University of Michigan)が提起したもので、ゴーシェ病の治療薬にかかる特許PI0211379-1に関するものです。特許権者は2005年に審査請求しましたが、INPIが実体審査を開始したのはそれから約9年後で、特許は出願から11年以上経った2016年に付与されました。
裁判所は、遅延は過度かつ不当であり、行政効率と法的確実性の原則に違反しているとし、特許権者のPTA申請を認め、特許PI0211379-1の満了日(特許付与時に公式登録されている2028年2月14日)を維持するよう命じました。
尚、INPIの上告が予想され、本件判決が他の進行中のPTA訴訟にどのように影響するか、現在のところ予測がつきません。弊所は、今後の動向を注視していきます。