【ブラジル】医薬関連特許出願の審査に関する新たな動き

2017年07月

2017年4月12日、ブラジル知的財産庁(Instituto nacional da propriedade industrial: INPI)とブラジル国家衛生監督局(Agência Nacional de Vigilância Sanitária: ANVISA)は、医薬品及び医薬品の製造方法に関する特許出願の審査に関する共同規則01/2017に署名しました。

1.これまでの問題点

2001年のブラジル産業財産法改正により、第229C条が導入され、医薬品及び医薬品の製造方法に関する特許出願については、ANVISAによる事前承認が義務付けられました。そのため、2001年以降、ブラジルでは医薬関連の特許出願は、INPIとANVISAによる重複審査が行われてきました(2012年5月まではINPI→ANVISAの順、2012年6月以降はANVISA→INPIの順での重複審査)。

しかし、ANVISAによる特許要件の判断基準は、INPIよりも厳しく、長年問題視されてきました。

INPIとANVISAとの権限範囲を巡る非常に激しい対立から、審査遅延の問題も生じています。即ち、ANVISAが事前承認審査の対象内として判断した案件については、ANVISAが承認したものも、承認しなかったものも、INPI内での処理が停止されています。このため、23,000件もの医薬関連特許出願が、INPIで未処理のまま残されていると見積もられています。また、医薬関連特許出願では、出願日からファーストアクション発行までの期間は、平均12年以上となっています。

2.新しい枠組み

(1) 共同規則01/2017は、INPIとANVISAの権限範囲を明確化すると共に、特許出願の審査の流れを新たに決めるものです。

(2) 権限範囲については、ANVISAは薬害リスク等公衆衛生の観点からの審査を、INPIは特許性の観点からの審査を担うことになりました。従って、特許要件についてはINPIが単独で審査することになりますので、従来のような重複審査が解消されることが期待されます。

(3) 医薬関連特許出願の審査の流れは、以下のようになりました。

1) 医薬関連特許出願に関しては、審査請求後、当該特許出願がINPIからANVISAに送付される旨の通知が公表されます。

2) ANVISAは、公衆衛生の観点から審査します。審査対象である医薬品が、ブラジルで使用が禁止されている物質 (例えば麻薬) を含むか、医薬の製法により、そのような使用禁止物質が生成される場合、健康へのリスクがあるとみなされ、出願はINPIに戻されます。INPIはANVISAの決定を公報に掲載し、出願を却下します。 

3) ブラジル全国民の医薬へのアクセスに関する公共政策及びブラジル健康保険制度である統一医療システム (Sistema Único de Saúde:SUS) の医薬援助プログラムに該当する医薬品または製法を含む出願については、ANVISAは、事前承認をすると共に、特許性に関する技術的な意見を述べることができます。INPIは、その意見をブラジル知的財産法第31条に定める情報提供と同等に扱います。さらに、ANVISAの意見は、公報に掲載されます。

4) INPIは、ANVISAの意見を考慮に入れつつ、実体審査を行います。INPIがANVISAの意見に同意しない場合は、同意しない理由が技術的に正当であることを明らかにする必要があります。

5) ANVISAから事前承認を得た特許出願については、INPIが特許審査を行い、特許要件を充足すると判断した場合、INPIは許可された特許出願のリストをそれらの最終クレームセットと共に、ANVISAに送付します。

この共同規則は、2017年6月12日に発効し、新規案件のみならず現在係属中の案件にも適用されます。

この新しい枠組みが、今後どのように機能を発揮するのか、注目していきたいと思います。更に詳しい情報が得られ次第、知財トピックスでお知らせする予定です。