2015年の知財トピックス

2015年12月

2015年

11月
■特許庁は、2015年9月16日に、特許・実用新案審査基準及び特許・実用新案審査ハンドブックを、審査基準の記載が簡潔かつ明瞭になること、基本的な考え方を理解できるように事例・裁判例を充実させること、基本的な考え方が国際的に通用するものであること等の観点で、全体的に改訂しました。例えば、物の発明に係るクレームにその物の製造方法が記載されている場合、即ち、所謂プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する2015年6月5日の最高裁判所判決を受けて、特許・実用新案審査基準及び特許・実用新案審査ハンドブックの明確性要件(特許法第36条第6項第2号)に関する記載を改訂・追記しました。これら改訂事項は、2015年10月1日以降の審査に適用されます。特許庁は、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム等の種々の類型や具体例については、今後の裁判例・審決例等を踏まえて、審査ハンドブックにおいて充実させていく方針です。

10月
■シンガポール知的所有権庁(IPOS)は、2015年9月1日に、アセアン諸国の中で初めて、PCTにおける国際調査機関(ISA)及び国際予備審査機関(IPEA)としての活動を開始しました。2012年12月以来、IPOSが受理したPCT 国際出願について、出願人の希望があれば、日本国特許庁が国際調査・国際予備審査を行うことができるようになっています(国際調査・国際予備審査のシンガポールへの管轄拡大)。将来は、日本国特許庁が受理したPCT国際出願について、出願人の希望があれば、IPOSが国際調査・国際予備審査を行うことができるようになる予定です。

■特許庁は、外国特許情報サービス(Foreign Patent Information Service、FOPISER(フォピサー))を、2015年8月7日より開始しました。これにより、これまでJ-PlatPatでは照会できなかったロシア、台湾及びオーストラリアの特許・実用新案文献並びにロシア及び台湾の意匠文献を無料で検索し、日本語で照会することができるようになりました。検索・照会可能な外国特許情報については、今後、順次拡大される予定です。

■ポルトガル政府は、2015年8月6日付けで、統一特許裁判所(Unified Patent Court;UPC)協定の批准を承認しました。現時点で、UPC協定を批准済みのEU加盟国は、オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ルクセンブルク、マルタ、ポルトガル及びスウェーデンの8か国です。統一特許裁判所及び単一特許(Unitary patent)システムの発効には、英国、ドイツ及びフランスを含む13のEU加盟国の批准が必要です。なお、ポルトガルには、UPCの調停・仲裁センターが設置される予定です。

9月
■日本国特許庁は、世界知的所有権機関(WIPO)が提供する特許の出願・審査情報(ドシエ情報)共有ネットワークWIPO-CASE(Centralized Access to Search and Examination)に正式に参加することを、WIPOに表明しました。従来より、日本国特許庁は、日米欧中韓の五大特許庁(五庁)でドシエ情報を共有するITサービス「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)」の開発を主導し、2013年から、五庁間でのドシエ情報の共有を開始しています。一方、世界知的所有権機関(WIPO)は、WIPO-CASEを開発し、イギリス、オーストラリア、カナダ等の中規模特許庁を中心にドシエ情報の共有を開始しました。現在では、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポールといったASEAN諸国にも共有範囲が拡大しています。この度、日本国特許庁がWIPO-CASEに参加することにより、WIPO-CASEに参加する18ヶ国(オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、インド、インドネシア、イスラエル、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、ニュージーランド、フィリピン、韓国、シンガポール、イギリス、ベトナム)の特許庁が、WIPO-CASEを通じて日本国特許庁のドシエ情報を参照することができるようになります。日本国特許庁のドシエ情報が有効に活用されて、出願人が日本で取得した質の高い権利を、海外でも同様かつ早期に取得できることが期待されます。

■特許法等の一部を改正する法律が、2015年7月3日に国会で成立し、7月10日に公布されました。施行日は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日ですが、未だ発表されていません。本改正法には、主として、以下のことが盛り込まれています。
(1) 職務発明制度の見直し
例えば、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から使用者等に帰属する。また、従業者等は、特許を受ける権利等を使用者等に取得等させた場合には、使用者等から相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有する。
(2) 特許料等の改定
例えば、特許権の設定登録以降の各年において、特許料を10%程度引き下げる。
(3) 特許法条約等への加入のための規定の整備
例えば、外国語書面出願に関して、外国語書面等の翻訳文を所定の期間内に提出することができなかったときは、特許庁長官が通知をするとともに、その期間が経過した後であっても、一定の期間内に限りその翻訳文を提出することができる。

■ドイツ特許商標庁とエストニア特許庁は、2015年7月6日に、グローバルPPH(GPPH、グローバル特許審査ハイウェイ)に参加しました。グローバルPPH は、参加国・地域の知的財産庁の間で利用可能なPPH の種類を共通化する多数国間の枠組みです。特許出願がいずれかの参加庁で特許可能と判断されれば,他の任意の参加庁で全ての種類(通常型PPH、PCT-PPH及びPPH MOTTAINAI)のPPH申請が可能となります。グローバルPPHに参加している国・地域は、日本、米国、韓国、英国、デンマーク、フィンランド、ロシア、ハンガリー、カナダ、スペイン、スウェーデン、北欧特許庁、ノルウェー、アイスランド、イスラエル、ポルトガル、オーストラリア、オーストリア、シンガポール、ドイツ及びエストニアの計21になりました。

8月
■日本と台湾との間で、2014年11月20日に、「特許手続上の微生物の寄託の分野における相互協力に関する覚書(日台特許手続微生物寄託覚書)」が締結されましたが、2015年6月18日から、台湾との特許手続上の微生物寄託分野における相互承認が開始されました。これにより、日本の国際寄託当局への国際寄託によって発行された受託証をもって台湾に特許出願することにより、台湾において微生物の寄託の効力が認められることになります。
ただし、日本国特許庁によりますと、台湾は、「特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブダペスト条約」に加盟していませんので、ブダペスト条約規則5.1の規定に基づき、日本の国際寄託当局から日本以外の国際寄託当局へ寄託された微生物が移送された場合(天災等により日本の国際寄託当局がブダペスト条約上の業務の遂行を停止する場合、受託する微生物の種類の変更により該当する微生物の寄託を行わなくなる場合など)に、当該寄託の効果は台湾においては有効ではなくなります。台湾における寄託の効果を維持するためには、原則としてブダペスト条約第4条(1)(e)の公表の日(寄託された微生物の属する種類の微生物について、日本の国際寄託当局が国際寄託当局としての地位を喪失したこと又は業務の遂行を停止することを、国際事務局(WIPO)が公表した日)から3か月以内に台湾へ再寄託を行う必要があります。

■2015年6月5日に、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(物の発明に係るクレームにその物の製造方法が記載されている場合)に関する最高裁判所判決が出されました。この判決は、知的財産高等裁判所が行った原判決を破棄して、知的財産高等裁判所に差し戻すというものです。この最高裁判所判決を受けて、特許庁は、プロダクト・バイ・プロセス・クレームに関する特許・実用新案審査基準「明細書及び特許請求の範囲の記載要件」の改訂を進めており、2015年10月を目途に、改訂審査基準に基づく運用を開始する予定です。それまで当面は、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合は、審査官・審判官が「不可能・非実際的事情(出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情)」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であると判断し、拒絶理由を通知する、という運用がされます。

■2015年5月28日付で、イタリア首相府は、イタリア政府が欧州単一特許の枠組への参加を決定した旨を表明しました。その結果、欧州単一特許には、28のEU加盟国のうち26のEU加盟国が参加することとなる見込みです(現時点では、スペイン及びクロアチアが不参加の見込み)。欧州単一特許の効力がイタリアにも拡張される結果、出願人にとっては欧州単一特許取得のメリットが増大することになります。

■2015年5月21日に日本国特許庁は、日本国特許庁と米国特許商標庁が2015年8月1日から日米協働調査を開始することになったことを、発表しました。これによると、日米両国に特許出願した発明について、日米協働調査試行プログラムへの参加申請(技術的に関連する一群の出願についてまとめて申請可能)をすると、日米の特許審査官がそれぞれ先行技術調査を実施し、その調査結果及びそれを踏まえた特許性の判断を共有した後に、それぞれの特許審査官が、それぞれ早期かつ同時期(申請から概ね6か月程度)に最初の審査結果を送付することになります。その結果、我が国企業等にとっては、審査・権利取得の時期に関する予見性が向上するだけでなく、日米の特許審査官が協働した調査結果を踏まえたより強く安定した権利を、日米両国それぞれにおいて早期かつ同時期に得ることが可能となりますので、我が国企業等のより円滑な国際事業展開の促進が期待されます。

7月
■日本国特許庁は、2015年7月1日から、米国特許商標庁が受理したPCT国際特許出願の一部について、国際調査・国際予備審査を行うことになりました。対象分野はグリーン技術を優先して取り上げ、試行の対象案件は3年間で5000件を目処にします。我が国は、アセアン主要国等7ヶ国が受理したPCT国際特許出願の一部について、国際調査・国際予備審査を行っており、これらの国々を国際調査・国際予備審査の管轄国としていますが、今般、当該管轄国を米国にも拡大します。

■2015年5月25日付の特許庁発表によると、特許庁は、アフリカにおいて初のPPH参加庁となるエジプト特許庁との間で、特許審査ハイウェイ(PPH)の試行に合意しました。当該試行は、2015年6月1日から開始し、2017年5月31日に終了しますが、延長される可能性があります。これにより、日本で特許になり得ると判断された出願については、出願人の申請により、エジプトにおいて簡易な手続で早期審査を受けることができます。今回の合意により、我が国がPPH を締結した国・地域は32 となります。

■審査請求料の返還機会及び時期を拡大する韓国改正特許法が、2015年5月18日に施行されました。審査請求を行った後、実質的な審査が進められる前、すなわち下記の何れかがあるまでに特許出願を取下げるか放棄した場合、申請により既納の審査請求料を返還してもらうことができます。
(1) 同一の発明について、同一人が同日に2以上の特許出願を行った場合の協議結果申告命令
(2) 特許庁が指定した専門機関による先行技術の調査結果の特許庁への通知
(3) 拒絶理由通知
(4) 特許決定謄本の送達
本改正は、出願日に関係なく、2015年5月18日以後の取下げ又は放棄案件に適用されます。

6月
■中国国家知識産権局は、2014年における中国の発明専利の権利付与数に関するデータを公表しました。それによると、2014年の発明専利権の付与件数は約233,000件でした。そのうち、国内発明専利権の付与件数は約163,000件で、2013年より約20,000件増加しました。一方、出願件数に関しては、2014年には、発明専利出願数が初めて実用新型専利出願数を上回りました。今後、中国特許出願は量から質への変化が実現され、発明専利権の付与件数の増加が見込まれます。

■台湾知的財産局は、2015年4月1日から、特許出願に関する実体審査の繰り延べ申請の受理を開始しました。この制度は、特許出願人の出願戦略や特許発明の商品化のタイムスケジュール等を考慮したものです。この実体審査の繰り延べは、既に審査意見通知を受け取った出願、査定済みの出願、第三者により実体審査が請求された出願、加速審査(AEP)又は特許審査ハイウェイ(PPH)の申請がなされた出願等には適用されません。繰り延べ申請は、実体審査の請求と同時か又はその後にできますが、台湾への出願日(優先権主張を伴う場合も、台湾出願日)から3年以内に行われなければなりません。

■国内優先権を主張して、2015年4月1日以降に国内出願又は国際出願(自己指定)した場合、先の出願は先の出願日から16ヶ月経過時にみなし取下げされることになりました(特許法第42条第1項、特許法施行規則第28条の4第2項)。

■日米欧中韓の五大特許庁(五庁)の中の複数庁に特許出願された同一発明について、各庁審査官の重複サーチ、重複審査を避けることができるように、各国特許出願・審査情報(ドシエ情報)を一括して参照することができるITサービス「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)」を五庁審査官が共有しています。五庁では、この「ワン・ポータル・ドシエ(OPD)」を、世界中の一般ユーザに提供ができるよう協力を進めてきましたが、2015年4月15日に、日欧中韓の四庁のドシエ情報の一括提供が開始されました。2015年6月には、米国のドシエ情報が加わり、五庁のドシエ情報の一括提供が開始されます。

5月
■2015年1月20日に、シンガポール知的財産庁とカンボジア工業・手工芸省は、シンガポールとカンボジア両国の知的財産保護のつながりを強めるための覚書を締結しました。この覚書での合意事項は、アセアン特許審査協力(ASPEC)プログラムのような現行の特許ワークシェアリングプログラムを補足することです。具体的には、シンガポールに出願した後、カンボジア内で一定の承認手続きを経ることにより、カンボジアにおいてもシンガポールと同様の権利(特許又は意匠)を取得できるようになりました(逆の場合も同じ)。そして、2015年3月4日に、最初のシンガポール特許がカンボジアで承認され、カンボジアでの保護が認められました。この記念すべき出願は、シンガポール知的財産庁の調査及び審査機関による肯定的な報告に基づいて、カンボジアで初めて特許として認められました。

■2014年に出願されたPCT国際出願件数は過去最大の約215,000件であり、2013年比で4.5%増となりました。2014年における出願件数の上位10ヶ国は、米国(61,492件)、日本(42,459件)、中国(25,539件)、ドイツ(18,008件)、韓国(13,151件)、フランス(8,319件)、英国(5,282件)、オランダ(4,218件)、スイス(4,115件)、スウェーデン(3,925件)でした。上位3ヶ国の前年比増減は、米国7.1%増、日本3.0%減、中国18.7%増でした。日本の減少は、主に電気分野の一部の出願人のPCT出願件数が減少したことによると思われます。

■欧州特許条約第65条の適用に関する合意(ロンドン・アグリーメント)がノルウェーについて2015年1月1日に発効し、欧州特許をノルウェーで有効化する際のノルウェー語への翻訳要件が緩和されました。具体的には、欧州特許が英語で付与された場合、又は他の言語で付与された後に明細書及び特許請求の範囲等の英訳を欧州特許庁に提出した場合であれば、特許請求の範囲のノルウェー語訳を提出すれば足り、明細書のノルウェー語訳は提出しなくてもよいこととなりました。ただし、英訳を入手できない場合は、依然として全文のノルウェー語訳を提出する途が残されています。なお、ロンドン・アグリーメントの締約国は、これで21ヶ国になりました。

4月
■2015年4月1日以降に日本特許庁によって受理された国際出願については、一定の要件を満たす場合、出願人は受理官庁である日本特許庁に対して優先権の回復請求手続を行うことができるようになりました。従来より、PCT規則26の2.3では、優先期間を徒過した場合であっても、優先期間内に国際出願を提出できなかったことの理由が、各国官庁が採用する基準を満たす場合には、受理官庁は出願人の請求により優先権を回復できることになっていましたが、日本はこれまでこの規則を留保していました。この度、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律施行規則を改正し、前述の留保の撤回により、国際出願日が優先期間満了の日から2月以内で、優先期間の徒過が「必要とされる相当な注意を払ったにもかかわらず生じた場合」には、出願人は優先権の回復請求手続を所定期間内に行うことができるようになりました。

■欧州特許庁とモロッコ政府との間で、欧州特許のモロッコにおける有効化(validation)を可能とすることについての合意が2015年3月1日に発効しました。その結果、出願日が2015年3月1日以降であれば、欧州特許庁で付与された欧州特許をモロッコにおいても有効化することが可能となります。モロッコにおいて有効化される欧州特許出願及び欧州特許は、モロッコ国内の特許法に従って国内の出願及び特許と同じ法的効果を有することになります。モロッコは、欧州特許条約(EPC)の締約国(38ヶ国)と拡張国(2ヶ国)を除く国の中において、欧州特許有効化の合意が発効した最初の国となりました。

■欧州特許庁は、2015年2月26日付で、2014年の出願件数と登録件数を公表しました。それによると、出願件数は274,174件(前年比3.1%増)、登録件数は64,613件(前年比3.1%減)でした。また、国別の出願件数では、欧州特許条約(EPC)加盟国(38ヶ国)からの出願が最多(95,156件、前年比1.2%増)であり、次いで、米国(71,745件、前年比6.8%増)、日本(48,657件、前年比4.4%減)、中国(26,472件、前年比18.2%増)及び韓国(16,358件、前年比2.3%増)の順でした。

■中国国家知識産権局は、2014年の専利出願統計を公表しました。それによると、発明専利出願は928,177件(前年比12.5%増)、実用新型専利出願は868,511件(前年比2.7%減)、意匠専利出願は564,555件(前年比14.4%減)であり、これらの合計は2,361,243件(前年比0.7%減)でした。2014年は発明専利出願数が初めて実用新型専利出願数を上回ったことが特徴であり、発明専利権による保護が求められる、従来よりも技術水準の高い出願が増えてきていることがうかがえます。外国出願人による発明専利出願は、前年比5.7%増の127,042件で、発明専利出願全体の13.7%を占めました。外国出願人による発明専利出願件数の国別トップ5は、日本(40,460件、前年比1.8%減)、米国(33,963件、前年比13.2%増)、ドイツ(13,597件、前年比0.8%減)、韓国(11,528件、前年比6.1%増)、フランス(4,575件、前年比10.4%増)の順でした。

3月
■米国の民間調査会社のIFI社は、2014年の米国特許取得件数上位50社を発表しました。1位~10位までは、IBM(7534件)、サムスン電子(4952件)、キャノン(4055件)、ソニー(3224件)、マイクロソフト(2829件)、東芝(2608件)、クアルコム(2590件)、グーグル(2566件)、LG電子(2122件)、パナソニック(2095件)でした。日本企業はトップ10に4社が入りました。IBMは22年連続で1位であり、サムスン電子は8年連続で2位でした。

■2015年1月29日に韓国特許庁が発表した2014年度知的財産統計の動向によれば、2014年の特許出願件数は210,292件で前年比2.8%増加し、実用新案出願件数は9,184件で前年比16.3%減少しました。なお、2014年の特許・実用新案・デザイン・商標の出願件数は、合計434,047件で前年比0.9%増加しました。

■日本と台湾との間で、2014年11月20日に、「特許手続上の微生物の寄託の分野における相互協力に関する覚書(日台特許手続微生物寄託覚書)」が締結されました。これにより、台湾出願人又は日本出願人が、台湾の寄託機関又は日本の国際寄託機関のいずれかを選択して生物材料を寄託することが、認められるようになります。日本人が台湾で特許出願するとき、台湾人が日本で特許出願するときにかかわらず、いずれも自国で寄託するだけでよく、重複寄託する必要はなくなります。また、台湾に特許出願された発明に係る生物材料が日本の国際寄託機関に寄託されている場合は、その分讓を請求できますし、その逆の場合も同様です。本覚書の施行日は、日本特許庁及び台湾知的財産局が関連準備作業の完了を確認した後に発表されます。

■韓国特許法が更に改正されました。この改正により、(1)新規性喪失の例外を主張できる期間が拡大されます。すなわち、明細書又は図面を補正できる期間、及び特許決定謄本が送達された日から3ヶ月以内(ただし、特許設定登録前まで)が追加されます。また、(2)分割出願できる期間が拡大されます。すなわち、特許決定謄本が送達された日から3ヶ月以内(ただし、特許設定登録前まで)が追加されます。改正特許法の施行日は、2015年7月29日の予定です。上記(1)は施行日以降に出願される特許出願に適用される予定であり、上記(2)は施行日以降に特許決定謄本が送達される特許出願に適用される予定です。なお、上記は実用新案にも適用されます。

■USPTOは、2014年12月16日に、米国特許法第101条の特許事由適格性判断のための新しい暫定ガイダンスを発表しました。この暫定ガイダンスは、既出願及び新しい出願の全てに適用されます。今後、意見募集及び公開ミーティングを経て、最終ガイダンスとして完成される予定です。

2月
■中国最高人民法院による「北京、上海、広州の知的財産権法院の事件管轄に関する規定」が、2014年11月3日に施行されました。この規定には、各知的財産権法院の事件管轄及び未結審事件の処理等について、具体的に記載されています。なお、2014年11月6日に、北京知的財産権法院が正式に事件の受理を開始しました。

■台湾専利法(日本の特許法、実用新案法、意匠法を統合したものに相当)の施行規則が一部改正され、2014年11月8日に施行されました。主要な改正点は次の通りです。
(1) グレースピリオドの起算点と終了点の明確化(改正規則第13条、第46条)
専利法第22条第3項及び第122条第3項に定める6ヶ月のグレースピリオド(優遇期間)は、当該条項の各号に定める特定の公開事実が発生した日の翌日から起算し、出願日までとします。
(2) 二重出願の申出及び公告(改正規則第16条、第26条の2、第83条)
同一人が同一の創作について、同日に特許と実用新案登録のそれぞれを出願する二重出願の場合、出願時に二つの出願のそれぞれにおいて二重出願の事実を説明しなければなりません。

■2014年11月1日に、オーストリア特許庁とシンガポール知的所有権庁が、グローバルPPH(GPPH、グローバル特許審査ハイウェイ)に合意しました。グローバルPPH は、参加国・地域の知的財産庁の間で利用可能なPPH の種類を共通化する多数国間の枠組みです。特許出願がいずれかの参加庁で特許可能と判断されれば,他の任意の参加庁で全ての種類(PCT-PPH及びPPH MOTTAINAIを含む)のPPH申請が可能となります。グローバルPPHに参加している国・地域は、米国、韓国、英国、デンマーク、フィンランド、ロシア、ハンガリー、カナダ、スペイン、スウェーデン、北欧(北欧特許庁)、ノルウェー、アイスランド、イスラエル、ポルトガル、オーストラリア、オーストリア、シンガポール及び日本の計19 になりました。

1月
■日本-タイ間のPPH(特許審査ハイウェイ)については、2014年1月より2年間の試行が開始されています。2014年1月以降10月迄のタイでのPPH適用審査状況を、タイにおける認可迄の所要期間の一般的傾向と比較すると、PPH適用による審査の迅速化は確実に図られているようです。

■特許庁は、中国・韓国語特許文献の検索環境整備を進める一環として、「中韓文献翻訳・検索システム」の本格版を2015年1月5日から提供しています。このシステムにより、中国・韓国語の特許文献を日本語で検索することが可能になります。これは、「特許庁業務・システム最適化計画」に基づくものであり、近年、世界の特許文献において、中国・韓国語の特許文献をはじめとする外国語特許文献の割合が増加していることに対応するためのものです。

■2015年1月1日に、韓国の改正特許法・改正実用新案法が全て施行されました。
詳しくは、当所ホームページ「世界の特許・実用新案制度(韓国)」でご覧いただけます。