【欧州】フランス知的財産法改正

2020年07月

「企業の成長・変革のための行動計画に関する法(PACTE 法)」が2019年5月22日にフランスで公布されました。これにより、知的財産法を含む多法域において様々な改正がなされました。その中でも特許・実用新案に関する主な改正事項は下記の通りです。

1.仮出願制度の導入
米国の仮出願制度と同様、クレームを添付せず明細書のみでの出願が可能となります。
仮出願は、1年以内に特許出願又は実用証出願(実用新案に相当)への変更が必要です。
適用対象:2020年7月1日以降の出願

2.実用証の存続期間の延長及び特許出願への出願変更
実用証の存続期間が6年から10年に延長されました。
適用対象:2020年1月10日時点で存続している実用証及び同日以降に発効する実用証
また、旧法では、特許出願から実用証出願への変更のみ可能でしたが、新法では、優先日又は出願日から18か月以内であり公開の技術的準備が完了する前であれば、実用証出願から特許出願への変更も可能です。
適用対象:2020年1月11日以降に出願された実用証出願

3.異議申立制度の導入
出願日に関わらず、2020年4月1日以降に、「特許を付与する旨の決定」が公報に掲載された案件に適用されます。
申立可能期間:公報掲載日から9か月以内
申立可能理由:新規事項追加、分割要件違反(実体面)、新規性、進歩性、産業上利用可能性、実施可能要件、サポート要件違反等

4.進歩性の実体審査の開始
旧法では、進歩性欠如は拒絶理由ではありませんでしたが、新法では、新規性に加えて、進歩性、特許適格性、産業上利用可能性についても審査されます。
新しい基準は、2020年5月22日以降の出願に適用されます。

5.侵害訴訟提起の時効の起算点の変更
旧法では、5年の時効の起算点を、「侵害行為から5年」とされていましたが、新法では、「侵害行為を権利者が知ってから、又は知ることができたときから5年」に変更されました。
適用対象:2019年5月23日時点で存続している権利