【韓国】特許法改正-損害賠償額算定方法の見直し

2020年08月

韓国で特許法一部改正案が2020年5月20日に国会を通過しました。
施行日は2020年12月10日の予定です。今回の改正により、特許権侵害による損害額の算定にあたり、特許権者の生産能力を超えた部分に対しても合理的実施料率による請求が可能となります。

1.現行法の問題点
現行法では、原則として、侵害者の譲渡数量に権利者の単位あたりの利益を乗じて得た額が損害額と推定されますが、権利者の生産能力を超える部分については、逸失利益は発生していないとして損害の発生が否定され、損害賠償を受けることができませんでした。
したがいまして、特許権者の生産能力があまり高くない場合は、侵害訴訟で勝訴しても、認められる損害賠償額が非常に少ないため、訴訟を放棄するケースもみられていました。
一方、侵害者側には、侵害の可能性があっても、まず実施により利益を得、その後、侵害が認定された時には、損害賠償額を支払う方が得であるという認識が形成されていました。

2.改正のポイント
今回の改正は、2020年4月1日に施行された日本の改正特許法第102条と同様の内容となっています。
例えば、特許権者の生産能力が100個であり、侵害者が1万個販売した場合、現行法で認められる損害賠償額の算定は以下の通りです。
権利者の生産能力 (100個) × 単位当たり利益額

一方、改正後は、特許権者の生産能力を超えた部分については、ライセンスが可能であったとして、以下の損害賠償が認められます。
権利者の生産能力 (100個)× 単位当たり利益額+超過分(9,900個)× 合理的実施料

2019年7月からは、特許権の故意的侵害に対する3倍賠償制度が施行されており、今回の改正と相まって、損害賠償額が増額され、特許権の保護がより強くなることが期待されています。