【中国】中国の国家知識産権局による公告第391号に基づいて改訂された審査指南が2021年1月15日から施行

2021年03月

今回の公告第391号による「専利審査指南」の改訂は第二部第十章「化学分野の発明専利出願の審査に関する規定」についての改訂で、改訂後の「専利審査指南」は2021年1月15日から施行された。
 改訂内容として主に次ぎの三つになる。
 1. 追加実験データに関する改訂(第二部第十章第3.5節)
 2. 化合物の新規性に関する改訂(第二部第十章第5.1節)
 3. 化合物及びバイオ分野における進歩性に関する改訂(第二部第十章6.1節、第9.4.2節)
 なお、改訂された該当箇所の具体的な内容については、こちらをご参照ください。

1.追加実験データに関する改訂
 国内外のイノベーション主体の要望に応え、追加実験データの審査基準をより明確化することが改訂の趣旨である。
 今回の改訂により、2017年国家知識産権局による「『専利審査指南』改訂に関する決定」(国家知識産権局第74号令)の関連の改訂内容が第3.5.1節に移動され、その内容が追加実験データの一般「審査原則」とされ、「出願日後に出願人が専利法第22条第3項、第26条第3項などの要件を満たすために、追加により提出された実験データに対して、審査官は審査しなければならない」ことが明確にされた。
 また、第3.5.2節の「医薬専利出願の追加実験データ」には二つの典型的な事例が今回の改訂により採用された。出願書類によって開示された内容及び従来技術の状況を如何に総合的に考慮すべきか、当業者の立場に立って証明される技術効果が出願書類によって開示された内容から得ることができるか否かを如何に判断するかが、これらの事例を通じてより具体的に示され、医薬専利出願の追加実験データの審査基準がより明確にされた。
2.化合物の新規性に関する改訂
 今回の改訂により、審査指南における「言及=公開」と文言「新規性を有しないと推定する」との間の関係及び境界が明確にされたと同時に、挙証責任も明らかにされた。
 第5.1節(1)の第1段落における「すでに当該化合物を言及すれば、当該化合物は新規性がないと推定する」との文言が、「当該化合物の化学名・・・などの構造情報が記載されているため、当業者が保護を求める化合物がすでに公開されていると認識するようになった場合、当該化合物は新規性がない」に改訂された。つまり、改訂後の審査指南では、化合物の新規性がないと判断するのに、化合物の「構造情報」の場合は、開示程度が「・・・技術者が・・・すでに公開されていると認識するようになった」ことまで求めている。また、「新規性を有しないと推定する」との文言から「推定」が削除された。
 第5.1節(1)の第2段落、第3段落の「新規性を有しないと推定する」場合について、①「例えば」に関連する内容が削除された結果、「新規性を有しないと推定する」場合が、「言及=公開」の事例とはしなくなる。②物理化学的パラメータ、製造方法などの要素を併合させ、「効果の実験データ」を追加し、これらの要素を総合的に考慮すべきで、かつ考慮した結果が「当業者が両者は実質的に同一であると推定する理由がある」との程度まで達してはじめて挙証責任が出願人に転換できるようになる。③「両者は実質的に同一であると推定する理由がある」との表現を使うことは、審査官は推定の合理性及び審査意見(拒絶理由通知)における充分な説明に注目すべきであることを強調したいからである。
3.化合物及びバイオ分野における進歩性に関する改訂
 化合物の進歩性に関する審査基準をより明確化することが改訂の趣旨である。
  ①「三歩法」は化合物の進歩性の判断の指導的なものであることの明確化
 改訂後の第6.1節の第1段落では、化合物の進歩性の判断も「三歩法」に従って判断するとの考えが明確に示された。すなわち、審査官は進歩性を判断するに当たって、まずは発明を理解し、従来技術を調べ、構造の改変と用途及び/または効果との関係を把握し、発明が実際に解決しようとする課題を特定し、当業者の立場に立って従来技術に対応する技術的示唆があるか否かを判断して、進歩性の審査結論を得るように導くことを改訂の趣旨とする。
 当業者が従来技術を基に論理的な分析、推理または有限の実験だけで構造上の改変ができて、保護を求める化合物を得ることができた場合は、従来技術に技術的示唆があると考える。これは、審査指南第二部分第四章の規定とも一致している。
  ②「予測できない技術的効果」の位置づけの明確化
 今回の改訂では、「予測できない技術的効果」に対する解釈は留保され、化合物の進歩性を判断する際に、用途の改変及び/または効果の改善が予測できないものであれば、保護を求める化合物は容易に想到できるものではないということになる。改訂後の内容では、「予測できない技術的効果」と「三歩法」との内在的な論理関係は進歩性判断の補助的な要素とするものであることが強調されている。
  ③化合物の進歩性の判断の事例の改訂、新たな事例の補充
 今回の改訂は、5つの事例によって化合物の進歩性の判断に対する考えが示され、「三歩法」との判定論理を化合物の進歩性の審査の指導的なものにすることに重点を置き、構造改変と用途及び/または効果との関係に対する把握が従来技術に技術的示唆の有無の正確な判断の前提及び基礎であることが強調されている。
  ④バイオ分野における進歩性の判断
 改訂により、バイオ分野における発明の進歩性の審査における「三歩法」の考え方をより明確にする一方、科学技術の進歩に応じて、産業界のニーズに応え、イノベーションの発展へのサポートを図るべく、技術主題を増やした。
 進歩性の判断の考え方として、保護主題に応じて内容を具体的に特定して、発明に最も近い従来技術との相違点(区別特徴)を確定する必要があり、そして、当該相違点が発明において達成できる技術的効果に基づいて、発明が解決しようとする課題を確定して、従来技術の全体が技術的示唆をしているか否かを判断することが明確にされた。
 また、バイオ分野における発明の進歩性の判断は発明が従来技術との構造上の差異、血縁関係の近さ及び技術効果の予測可能性などを考慮する必要がある。

参考情報
https://www.cnipa.gov.cn/art/2021/1/11/art_66_156156.html