【日本】「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定

2021年06月

2021年3月2日、「特許法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、現在開会中の、第204回通常国会に提出される予定です。今回の改正は、新型コロナウイルスの感染拡大により、デジタル化の進展等をはじめ、大きく変化した生活様式や経済活動のあり方に対応するためのものです。

1.本法律案の概要は以下の通りです。
なお、改正の対象となる法律を各項目末尾に【】で記載しています。【】中、(特)は特許法、(実)は実用新案法、(意)は意匠法、(商)は商標法、(工)は工業所有権に関する手続等の特例に関する法律、(国)は特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律、(弁)は弁理士法をそれぞれ意味します。

(1) 新型コロナウイルスの感染拡大に対応したデジタル化等の手続の整備
審判の口頭審理等について、審判長の判断で、当事者等が審判廷に出頭することなくウェブ会議システムを利用して手続を行うことが可能となります。
【特・実・意・商】
特許料等の支払方法について、口座振込等による予納(印紙予納の廃止)や、窓口でのクレジットカード支払等が可能となります。【工】
意匠・商標の国際出願の登録査定の通知等について、(感染症拡大時に停止のおそれのある)郵送に代えて、国際機関を経由した電子送付を可能とするなど、手続が簡素化されます。【意・商】
感染症拡大や災害等の理由によって特許料の納付期間を経過した場合に、相応の期間内において割増特許料の納付を免除する規定が設けられます。【特・実・意・商】
(2) デジタル化等の進展に伴う企業行動の変化に対応した権利保護の見直し
増大する個人使用目的の模倣品輸入に対応し、海外事業者が模倣品を郵送等により国内に持ち込む行為は商標権等の侵害として位置付けられます。【意・商】
デジタル技術の進展に伴う特許権のライセンス形態の複雑化に対応し、特許権の訂正等における通常実施権者(ライセンスを受けた者)の承諾が不要となります。【特・実・意】
特許権等が手続期間の徒過により消滅した場合に、権利を回復できる要件が緩和されます。【特・実・意・商】
(3) 知的財産制度の基盤の強化
特許権侵害訴訟において、裁判所が広く第三者から意見を募集できる制度を導入し、弁理士が当該制度における相談に応じることが可能となります。【特・実・弁】
審査負担増大や手続のデジタル化に対応し収支バランスの確保を図るべく、特許料等の料金体系が見直されます。【特・実・意・商・国】

2.施行期日
施行期日につきましては、一部の規定を除き、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。

図

詳細につきましては、経済産業省の以下のウエブサイトをご参照下さい。
https://www.meti.go.jp/press/2020/03/20210302003/20210302003.html

(編集者注:上記「特許法等の一部を改正する法律案」は令和3年5月14日に国会で可決・成立し、5月21日に法律第42号として公布されております。
施行日が令和3年10月1日である規定は以下の通りです。
 ・審判の口頭審理のウェブ会議システムによる手続
 ・特許料等の支払いに関する口座振替による予納
 ・意匠の国際出願の登録査定の通知の電子送付
 ・感染症拡大・災害等の理由による割増料金免除
施行日が令和4年4月1日である規定は以下の通りです。
 ・弁理士制度の見直し(業務の追加・法人名称の変更・一人法人制度の導入)
 ・特許権の訂正等における通常実施権者の承諾不要
 ・特許権侵害訴訟における第三者意見募集制度の導入
 ・特許料等の支払いに関する窓口でのクレジットカード支払い
 ・特許料等の料金体系の見直し
https://www.meti.go.jp/press/2021/09/20210914001/20210914001.html