不正登録対応策(2)

2.サイバースクワッティングへの対応策

サイバースクワッティングへの対応策は大きく分けて2つあります。
1つは、仲裁機関の裁定による解決、もう1つは裁判による解決です。

(1)仲裁機関の裁定による解決

ドメイン名を管理・統括するICANNやJPNICでは、「統一紛争解決方針」という紛争解決のための基準を定めています。この方針によると、自己の商標等と同一、類似のドメイン名を他人が不正の目的(悪意)で登録した場合、そのドメイン名を自己に移転(または取消)できることになっています。そして、ICANNの管理する「.com」「.net」「.org」等のドメイン名については、WIPO(世界知的所有権機関)等の機関が、「.jp」のドメインについては、日本知的財産仲裁センターが、その仲裁判断を行うことになっています。WIPOでは、すでに数多くの裁定がなされており、「gameb0y.com」「hitachi2000.net」「postpet.net」「toshiba.net」等のドメインを申立人に移転するとの判断がなされています。一方、「jal.com」「fuji.com」等のドメイン名については、「悪意(bad faith)」による登録ではないとして、申立が認られませんでした。「jal.com」については、ドメイン名登録者のイニシャルが「J.A.L」であったこと、「fuji.com」については、「fuji」との言葉は広く一般的に使用されており、特定の会社を指称するものでないことが判断の決め手になったようです。
日本知的財産仲裁センターでは、2002年10月31日までに42件の申立があり、取り下げがなされた3件以外はすべてドメイン名の移転または取消を認める裁定がなされています。なお、弊所において、日本知的財産仲裁センターまたはWIPO(世界知的所有権機関)への申立の代理をさせていただくことも可能です。弊社では、これまでに日本知的財産仲裁センターでの仲裁代理1件、WIPOでの仲裁代理3件を行っており、いずれの移転裁定を受けています。

(2)裁判による解決

自社の商標を他人が勝手にドメイン名として登録、使用している場合、不正競争防止法に基づき訴訟を提起することができます。
2001年に改正された不正競争防止法は、「不正の利益を得る目的で、又は他人に損害を加える目的で、他人の特定商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章その他の商品又は役務を表示するものをいう。)と同一若しくは類似のドメイン名を使用する権利を取得し、若しくは保有し、又はそのドメイン名を使用する行為」を不正競争行為の一態様として規定しています(不正競争防止法第2条第1項第12号)。これにより、不正にドメイン名を取得、使用する行為によりビジネス上の利益が害される場合(または害されるおそれのある場合)には、差止請求、損害賠償請求が認められることになりました。また、「不正の利益を得る目的」が認定できない場合であっても、不正競争防止法第2条第1項第1号(混同惹起行為規制)または同法第2条第1項第1号(著名表示冒用行為規制)によって、ドメイン名の登録、使用を排除する余地があります。
その場合、ドメイン名が不正競争防止法でいう「商品等表示」に該当するかどうかが最大の論点となります。この点に関し、「JACCS」事件の富山地裁判決(平成10年(ワ)323号)や「J-PHONE」事件の東京地裁判決(平成12年(ワ)3545号)では、ドメイン名も不正競争防止法の「商品等表示」に該当するとして、ドメイン名の使用の差し止めが認められました。