【欧州】欧州特許庁(EPO)2020年度の年次レビューを公表

2021年12月

欧州特許庁(EPO)は、2021年6月29日に、年次レビュー 2020(Annual Review 2020)を公表しました。
EPOは、昨年から従前の年次報告書(Annual Report)の形式を変更し、年次レビューとして、EPOの戦略計画2023[1]の5つの目標それぞれの下での主な活動や、審査・審判等主要な業務成果に加え、品質、環境維持などの特定分野に関する詳細なレポートを紹介しています。
https://www.epo.org/news-events/press/releases/archive/2021/20210629.html

1.デジタル化の推進
年次レビュー 2020の中で、特に注目すべき点は、新型コロナウイルス感染症パンデミックへの対応の必要性から、EPO内のデジタル化が急速に進んだことです。
ほぼすべてのスタッフがテレワークでの勤務となった結果、2020年末までに、EPO内業務の97%がデジタル化されました。これにより、当初2023年末までの目標とされていたデジタル化が数ヶ月で達成されたことになります。更に、デジタル化によりEPO内での紙の消費量が2019年と比較して、5,860万枚減少し、出張(移動)によるCO2排出量が86%減少しました。

2.ビデオ会議による口頭審理
次に注目すべき点は、口頭審理をビデオ会議に切り替えた点です。2019年には、ビデオ会議による口頭審理の実施は900件以下(審査手続のみ)であったのに対し、2020年には2,600件以上の口頭審理(審査および異議申立)がビデオ会議によって実施されました。

EPOはこのような対策を講じた結果、コロナ渦の中にあっても、出願件数は前年比僅か0.7%減の180,250件、審査請求から最終処分までに要した期間は平均23.7か月(前年比2.4か月減)、異議申立から異議決定までに要した期間は平均15.4か月(前年比2.1か月減)と、堅調な実績を残すことができました。

審査・審判等の主要な業務成果につきましては、弊所知財トピックス2021年7月掲載分(2020年の年次統計(Patent Index))をご参照下さい。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/9875/


[1]戦略計画2023は2019年6月に採択され、以下の5つの目標を掲げています。
目標1「熱意に満ち、知識が豊富で、かつ協力的な組織の構築」
目標2「ITシステムの簡素化及び近代化」
目標3「高品質の成果物及びサービスの効率的な提供」
目標4「グローバルな影響力を有する欧州特許システム及びネットワークの構築」
目標5「長期的な持続可能性の確保」