【ブラジル】ブラジルでの早期・優先審査プログラムのご紹介

2022年02月

2021年5月12日、ブラジル連邦最高裁判所は、今後付与される特許の存続期間は出願日から20年を超えないものとする判決を下しました。
従来、ブラジル産業財産権法第40条補項(現在は削除)において、特許権の存続期間は特許付与日から10年未満であってはならないと規定されていたことから、審査の遅延により特許付与が遅れた場合は、出願日から20年を超えて存続期間が認められるケースがありました。しかし、この判決後は特許付与が遅れた場合でも、特許の存続期間は出願日から20年を超えることは認められないこととなりました。
詳細につきましては弊所知財トピックス2021年8月掲載分をご参照下さい。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/10027/

そこで、審査を促進し、少しでも長く特許権の利益を享受していただくために、ブラジルで利用可能な早期・優先審査プログラムをご紹介いたします。

全てのプログラム共通の申請要件は以下の通りです。
・出願公開されていること。
・出願審査請求がされていること。
・他の早期審査プログラムに申請していないこと。
・申請から申請受理までの間に、分割出願や自発補正がなされていないこと。

1.特許審査ハイウェイ(PPH)試行プログラム
日本国特許庁(JPO)とブラジル産業財産庁(INPI)は、全分野を対象としたPPH試行プログラムを実施しています。
詳細につきましては弊所知財トピックス2021年3月掲載分をご参照下さい。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/9226/

日本を含む締約国全体のINPIへのPPH申請件数は、約1,110件でした。約1,110件の申請の内約94%が受理され、受理された申請の内約82%が特許査定となり、PPH申請から特許付与までの平均日数は約300日でした。

(*対象期間:2018年1月~2021年3月。以下同じ。)

2.グリーンパテント・プログラム
申請対象:代替エネルギー、電気自動車等の環境に優しい「グリーン」技術に関する特許出願。
上記期間中の申請件数は約330件、申請受理率は約80%、特許査定率は約60%、申請から特許付与までの平均日数は約380日でした。

3.ブラジル市場で入手可能な技術 申請対象:商業化、ライセンス、輸入等で既にブラジル国内市場で入手可能な技術を含む(部分的でも可)発明に関する特許出願。 上記期間中の申請件数は約20件、申請受理率及び特許査定率は100%、申請から特許付与までの平均日数は約125日でした。

4.他人による実施 申請対象:正当権原無き第三者が特許出願に係る発明を実施している場合であって、その第三者に警告文の送付済みの特許出願。
(出願人のみならず利害関係人も申請することができます。) 上記期間中の申請件数は約350件、申請受理率は約75%、特許査定率は約50%、申請から特許付与までの平均日数は約370日でした。

5.健康関連製品 申請対象:AIDS、癌、希少疾患等の診断、予防又は治療に用いられる医薬品等に関する特許出願。
上記期間中の申請件数は約180件、申請受理率は約95%、特許査定率は約65%、申請から特許付与までの平均日数は約430日でした。

6.COVID-19治療関連技術 申請対象:新型コロナ感染症の診断、予防又は治療に用いられる医薬品等に関する特許出願。
上記期間中の申請件数は約60件、申請受理率は約95%、特許査定率は約57%、申請から特許付与までの平均日数は約260日でした。

7.出願人が60歳以上、深刻な病、障害を持っている場合
申請対象:出願人が60歳以上、深刻な病、身体又は精神的な障害をもつ自然人である特許出願。
上記期間中の申請件数は約870件、申請受理率は約90%、特許査定率は約55%、申請から特許付与までの平均日数は約335日でした。

参照:INPIウェブサイト:
https://www.gov.br/inpi/pt-br/servicos/patentes/tramite-prioritario
https://www.gov.br/inpi/pt-br/servicos/patentes/tramite-prioritario/estatisticas-gerais