【日本】知的財産高等裁判所の統計データより-令和7年の傾向

2026年08月NEW

知的財産高等裁判所 (知財高裁) は、ウエブサイトにて、知的財産権関係民事事件や審決取消訴訟の受件数、平均審理期間、および特許権の侵害に関する訴訟における統計等のデータを公表しています。その要点を以下にまとめました。
なお、以下の表における「新受」は新たにその年に提起された件数、「既済」はその年に終了した件数を指します。

1. 令和3~7年の知的財産権関係民事事件の新受・既済件数及び平均審理期間
(1) 知財高裁での統計は次の通りです。
https://www.courts.go.jp/ip/vc-files/ip/R8_j-kousoshin.pdf

年次 新受 既済 平均審理期間
令和3年 103 86 7.0
令和4年 126 122 9.2
令和5年 112 124 8.0
令和6年 88 92 7.4
令和7年 88 99 8.4

(2) 全国地裁第一審と全国高裁控訴審の統計は次の通りです。
https://www.courts.go.jp/ip/vc-files/ip/R8_j-zenkokuchisai.pdf
https://www.courts.go.jp/ip/vc-files/ip/R8-j-zenkokukousai.pdf

  年次 新受
(件)
既済
(件)
平均審理期間
(月)
全国地裁
第一審
令和3年 618 524 15.2
令和4年 563 688 15.2
令和5年 604 607 14.9
令和6年 509 526 14.5
令和7年 545 517 13.9
全国高裁
控訴審
令和3年  121 103 6.9
令和4年 165 153 8.2
令和5年 145 153 7.6
令和6年 130 136 7.1
令和7年 126 141 8.1

令和7年は、知財高裁と全国地裁第一審とで、新受・既済件数の増減の方向性が分かれました。全国地裁第一審では新受件数が増加し既済件数は減少した一方、知財高裁では新受件数が前年と同水準で推移し既済件数は増加しました。また、全国高裁控訴審では新受件数が減少し、既済件数は増加しました。

2. 審決取消訴訟の新受・既済件数及び平均審理期間の統計は次の通りです。
https://www.courts.go.jp/ip/vc-files/ip/R8_j-shinketsutorikeshi.pdf

年次 新受
(件)
既済
(件)
平均審理期間
(月)
令和3年 165 175 9.8
令和4年 133 148 9.3
令和5年 149 149 8.7
令和6年 116 141 8.3
令和7年 121 124 8.0

審決取消訴訟では、新受件数が増加し、既済件数は減少するとともに、平均審理期間は前年より短縮しました。

3. 特許権の侵害に関する訴訟における統計(東京地裁・大阪地裁)
https://www.courts.go.jp/ip/vc-files/ip/2025_sintoukei_H28-R7.pdf
以下の統計は、東京地方裁判所及び大阪地方裁判所の知的財産権専門部が作成した特許権の侵害に関する訴訟の統計情報を、最高裁判所事務総局行政局が取りまとめたものであり、暫定値です。各数値は、平成28年から令和7年の数値を合算したものです。1及び2の統計とは異なり、単年ごとの増減傾向を示すものではなく、平成28年から令和7年までの10年間の累計値である点にご留意ください。

(1)判決により終局した件数:523件

内訳 件数
棄却 334件
却下 11件
債務不存在確認認容 14件
認容 161件
債務不存在確認棄却 3件
※認容には一部認容を含む。
※債務不存在確認棄却には一部棄却を含む。
※債務不存在確認棄却は、平成29年からの数値である。平成28年の債務不存在確認棄却は、棄却に含まれる。

(2)和解により終局した件数: 192件

内訳 件数
差止給付条項・金銭給付条項あり 64
差止給付条項のみあり 15
金銭給付条あり項のみ 74
差止給付条項・金銭給付条項なし 39

上記 (1) 及び (2) の表より、平成28~令和7年に、判決又は和解により終局したケースは合計715件あり、そのうち523件(約73.1%)が判決で終局し、192件(約26.9%)が和解により終局しています。判決に至ったケースのうち、認容判決は161件 (約31%)であり、和解のうち、153件 (約80%) において、差止及び/又は金銭給付が認められました。つまり、侵害訴訟全体の約44%において、特許権者の訴えが、何らかの形で認められました。

(3)判決で認容された金額

金額 件数
1円以上100万円未満 20
100万円以上1000万円未満 21
1000万円以上5000万円未満 34
5000万円以上1億円未満 11
1億円以上 38
*附帯請求及び訴訟費用に関する金額は含まない。

近年、判決で1億円以上の損害額が認容される件数は増加傾向にあり、平成28年から令和7年までの累計では38件でした。

(4)和解において支払うことが約された金額

金額 件数
1円以上100万円未満 18
100万円以上1000万円未満 39
1000万円以上5000万円未満 33
5000万円以上1億円未満 10
1億円以上 30

和解において支払うことが約された金額についても、1億円以上の支払額が約された件数は、平成28年から令和7年までの累計で30件でした。

(5)無効の抗弁の有無・無効の抗弁に対する判断

種別 特許権の数 割合
無効の抗弁なし 161件 22%
無効の抗弁あり・判断なし 264件 36%
無効の抗弁あり・特許有効判断 153件 21%
無効の抗弁あり・特許無効判断 152件 21%
*判決により終局した事件について、各事件において主張された特許権の数を計上している。例えば、1件の特許権侵害訴訟事件で2つの特許権が主張された場合は2件と数えた上で、各特許権について無効の抗弁の有無と無効の抗弁に対する判断(特許有効判断又は特許無効判断)を計上している。

特許侵害訴訟の約78%において、無効の抗弁が主張され、約21%において、特許無効の判断がなされました。