【日本】特許庁、特許行政年次報告書2017年版を公表

2017年11月

2017年6月29日、特許庁は、特許行政年次報告書2017年版を公表しました。
*下記URLをクリックして、特許庁ウェブサイトからご覧になれます。
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2017/index.html

この報告書は、知的財産制度を取り巻く現状と方向性、国内外の動向と分析について、直近の統計情報、特許庁の取組等を基に取りまとめたものです。

以下に、注目すべき項目について、報告書の掲載順に簡単に説明します。

1.第四次産業革命と知的財産

第四次産業革命を引き起こす主要技術の一つとして位置づけられるIoT関連技術の特許出願は、ここ20年来、日米欧中韓において年々増加しています。特に、自動車、ヘルスケア(健康・医療)、ものづくりの分野の出願件数が伸びています。(第18/382頁。これは、下記URLをクリックして、本編を全体版一括ダウンロードした場合の頁数です。以下同様)https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2017/document/index/all.pdf

 

2.特許出願件数とPCT国際出願件数

特許出願件数は、2007年以降漸減傾向で推移していますが、減少幅は縮小しつつあり、2016年は318,381件(前年比0.1%減)でした。他方、日本特許庁を受理官庁としたPCT国際出願の件数は、増加傾向を示しており、2016年は44,495件(前年比3.2%増)となり、過去最高でした。これは、研究開発や企業活動のグローバル化が進展し、国外での知財戦略の重要性が増していることにもよると考えられます。(第25/382頁)

3.特許審査実績

2016年の特許査定率は、75.8%(前年比4.3ポイント増)でした。(第26/382頁)
*特許査定率=特許査定件数/(特許査定件数+拒絶査定件数+一次審査通知後の取下げ・放棄件数)

4.特許出願、審査請求、特許登録等

出願年別で見ると、特許出願件数は近年漸減傾向ですが、審査請求件数はほぼ横ばいで、特許登録件数は17万件前後を維持しています。特許出願件数に対する特許登録件数の割合(特許登録率)は増加傾向にあることから、企業等における知的財産戦略において量から質への転換が進んでいると考えられます。(第27/382頁)

5.世界の特許出願件数とPCT国際出願件数

2006年に179.1万件だった世界の特許出願件数は、その後10年間で1.6倍に増加し、2015年には288.9万件になりました。2015年の世界の特許出願件数の伸びは、主に、中国人による中国国家知識産権局への特許出願件数の大幅な増加によります。(第28/382頁)
世界のPCT国際出願件数は、2009年以降増加しており、2016年は232,642件(過去最高)でした。(第29/382頁)

6.一次審査通知までの期間と最終処分期間

2015年の日本特許庁の一次審査通知までの期間(審査請求日から一次審査までの平均期間)は9.7ヶ月であり、最終処分期間は15.0ヶ月でした。(第34/382頁)
*最終処分期間は、審査請求日から取下げ・放棄又は最終処分を受けるまでの平均期間です。

なお、期間の計算基準が異なるので、厳密な比較はできませんが、米欧中韓特許庁の上記期間も掲載されています。(第34/382頁)

7.外国人による日本への特許出願件数と日本での特許登録件数

2016年の外国人による日本への特許出願件数は、前年からほぼ横ばいの58,137件でした。この内、米国と欧州からの出願が全体の77%を占めました。2016年の外国人による日本での特許登録件数は、42,444件(前年比0.4%減)でした。この内、米国と欧州からの出願に基づく登録が全体の78.5%を占めました。(第37/382頁)

8.審判請求・異議申立の動向と審理動向

(1) 2016年における特許の拒絶査定不服審判請求件数は、18,898件でした。前置審査の結果では、拒絶査定を取り消して特許査定される件数(前置登録件数)が、2010年以降、全体の6割前後で推移しています。2016年における特許の異議申立件数は、1,214件でした。また、2016年における無効審判の請求件数は、特許が140件、実用新案が10件でした。(第64/382頁、第65/382頁)

(2) 2016年における特許の拒絶査定不服審判の平均審理期間は、13.1ヶ月でした。2016年における特許異議申立の平均審理期間は、5.8ヶ月でした。また、2016年における特許・実用新案の無効審判の平均審理期間は、10.5ヶ月でした。(第65/382頁、第66/382頁)
*特許異議申立制度においては、維持決定にかかる期間と取消決定にかかる期間に有為な差があるために、制度開始から十分な期間が経過していない現時点では、審理期間が短い維持決定が最終処分に占める割合が高く、平均審理期間は比較的短い数値となっています。来年から、最終処分に、審理期間が長い取消決定が増えてくれば、平均審理期間は長くなることが予想されます。(第67/382頁、第68/382頁)

9.早期審査制度とスーパー早期審査制度

2016年の早期審査の申請は19,492件(前年比11.3%増)でした。2016年における早期審査制度を利用した特許出願の一次審査通知までの期間は、早期審査の申請から平均2.5ヶ月でした。(第137/382頁)
「実施関連出願」かつ「外国関連出願」に該当する出願を対象とするスーパー早期審査の申請は、2016年において450件ありました。スーパー早期審査制度を利用した特許出願の、2016年の一次審査通知までの期間は、スーパー早期審査の申請から平均0.7ヶ月(国際出願後に国内に移行した特許出願については平均1.4ヶ月)でした。(第137/382頁)