【カナダ】医薬品特許権存続期間の延長登録制度の導入

2017年11月

カナダ政府は、欧州連合 (EU) とカナダが調印した「包括的経済・貿易協定 (CETA)」における義務を果たす為、ヒト用医薬品及び動物用医薬品について、特許権存続期間の延長登録制度を初めて導入しました。この制度は、補足保護証明制度 (certificate of supplementary protection, CSP) と呼ばれます。

CSP導入に伴い、カナダ政府は、特許法を改正すると共に医薬品の補足保護証明に関する規則 (Certificate of Supplementary Protection Regulations: CSP規則) を策定し、改正法及び新規則は、2017年9月21日に発効しました。
詳細につきましては、以下のURLをご参照ください。
https://www.hc-sc.gc.ca/dhp-mps/alt_formats/pdf/prodpharma/applic-demande/guide-ld/csp/csp-guide-cps-ld-sept19-eng.pdf

CSP制度は、CETA加盟国に限定されないので、何人も利用可能です。

1.延長可能な期間 (CSPの期間)
CSPの期間 (延長期間) は以下の式で表される通り、特許出願日から販売承認(Notice of Compliance、NOC) がされた日までの経過期間より5年を引いた期間であり、最長2年までとなります。

CSPによる延長期間= (販売承認日-特許出願日) - 5年
*但し、延長期間は最長2年

2.CSPの適用対象
(1) CSPの適用対象は、新規な有効成分又は有効成分の組み合わせ「そのもの」です。また、既にCSPが適用された有効成分について再度CSPの適用を受けることはできません。なお、CSP適用済みの有効成分の次のようなバリエーションも、当該有効成分と同一であると扱われ、新たなCSPの対象とはなりません:
a) エステル、塩、錯体、キレート、クラスレートその他の非共有結合誘導体、
b) エナンチオマー、エナンチオマー混合物、
c) 溶媒和物、結晶多形、
d) 翻訳後修飾 (post-translational modification) 及び
e) 上記a)~d)の組合せ

 (2) CSPの付与は、改正法発効後に販売承認が得られた場合に限られ、改正法発効前にすでに販売承認されている製品には遡及適用されません。

3.対象となる特許
(1) CSP申請時及びCSP適用時に有効な特許であること
(2) 少なくとも1つの請求項が以下のいずれかに係るものであること
・販売承認された医薬品の有効成分 (又は組み合わせ)
・或る製造方法により製造され、販売承認された医薬品の有効成分 (又は組み合わせ)(product-by-process claimの場合)
・販売承認された医薬品の有効成分 (又は組み合わせ) の使用
従って、有効成分の製法クレーム及び有効成分を含有する組成物クレームは、CSPの対象とはなりません。

4.CSP申請期限
CSP申請できる期間は以下の通りです。
(1) 特許発行日以降に販売承認された場合、販売承認から120日以内
(2) 販売承認が特許付与前にされた場合、特許発行日から120日以内

5.所定国で既に製造販売承認の申請がなされている場合
(1) 所定国 とは、EU若しくはそのいずれかの加盟国、米国、オーストラリア、スイス、又は日本を指します。
(2) カナダでの販売承認の申請がなされる前に、同一の有効成分を含有する医薬について所定国で既に製造販売承認の申請がなされている場合、最初の所定国での申請の日から所定期間内に、カナダでの販売承認の申請をする必要があります。これは、先進的な医薬をカナダ市場へ早期に導入させるためです。
(3) 上記所定期間は、改正法発効日から1年以内 (2018年9月21日まで) にCSP申請をする場合は、十分な移行期間を与えるために24ヶ月以内とされていますが、それ以外の場合は12ヶ月以内となります。