【米国】米国最高裁、On-Sale Bar(販売による新規性の喪失)は守秘義務のある販売行為にも適用されると判示

2019年04月NEW

2019年1月22日、米国最高裁は、Helsinn Healthcare S.A. v. Teva Pharmaceuticals USA, Inc. 事件において、現米国特許法(America Invents Act, 2011: AIA) における102条(a)(1) の「on sale」の解釈は、旧米国特許法(Pre-AIA)における「on sale」の解釈から変更されておらず、出願人によるクレーム発明の販売は、販売相手が守秘義務を負っており、発明の詳細が公に開示されていない場合であっても、クレーム発明の新規性を破壊し得る、との判決を下しました。

1.On-Sale Barとは
Pre-AIAの102条(b)では、出願日の一年前の日よりも前に米国内において販売された発明は新規性を喪失する旨が規定されていました。これはon-sale barと呼ばれ、守秘義務を課した販売行為 (secret sales)、つまり特許発明の内容が公開されない販売行為にも適用されてきました。
しかし、AIA下でも、Pre-AIAと同様に、on-sale barは特許発明の内容が公開されない販売行為にも適用されるのか否かは争点となっていました。

2.事件の背景
Helsinn Healthcare S.A. (以下、Helsinn社) はスイスの製薬会社であり、化学療法により引き起こされる吐気・嘔吐を抑制する薬Aloxiの製造会社です。Helsinn社はAloxiの有効成分であるパロノセトロンに関する特許(米国特許第: 8598219号,以下 ‘219特許)の特許権者でもありました。 Helsinn社は同特許の有効出願日の1年以上前に、米国のMGI Pharmaとライセンス契約及び購買契約を結びました。同契約では、投与量等の情報は機密事項とされていましたが、契約の存在自体はプレスリリースなどで公表されました。

その後、Helsinn社はTeva Pharmaceutical Industries, Ltd.とTeva Pharmaceuticals USA, Inc.(以下、Teva社と総称します)が ‘219特許を侵害しているとして、侵害訴訟を提起しました。裁判において、Teva社は上記の契約はAIA 102条(a)(1)が規定する「販売」(on sale) に該当するものであり、‘219特許はon-sale barにより無効にされるべきであると主張しました。

(1)連邦地方裁判所の判断
地裁は、特許になっていた投与量が公開されてなかったことから、上記契約はAIA下では、「販売」に該当しないと判断しました。
(2)連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の判断
CAFCは地裁の判決を覆し、特許発明が販売されたことが公になっていれば、特許発明の詳細が公になっていなくても、「販売」に該当するとしました。
これを不服としたHelsinn社が最高裁での審議を求めました。
(3)最高裁の判断
最高裁は、守秘義務が課され、特許の内容が公知にならない販売であっても、on-sale barの対象になると判示しました。

3.弊所コメント
今回の判決から、AIA下においても、Pre-AIA下と同様に、たとえ守秘義務により発明の詳細が公に開示されていない場合であっても、販売行為により発明の新規性が失われることが明らかとなりました。
Pre-AIA下ではアメリカ国内の販売行為のみが対象でしたが、AIA下では全世界での販売行為が対象となります(AIA 102条(a)(1))。 よって、例えば、日本企業が、日本国内で、他の日本企業と秘密保持契約を結んだ上で販売をしたとしても、新規性を喪失すると考えられます。
そこで、米国での特許取得をお考えの場合、できるだけ販売行為前に出願されることをお勧めします。仮に、販売行為をしてしまった場合は(たとえ秘密保持契約を結んでいたとしても)、 グレースピリオド内(販売行為から1年以内)に出願されることをお勧めします。

尚、本件記載の判決文は以下のサイトから入手可能です。
https://www.supremecourt.gov/opinions/18pdf/17-1229_2co3.pdf