【欧州】欧州特許庁(EPO)、本質的に生物学的な方法により得られた植物及び動物を特許対象から除外

2017年10月

EPOは、「本質的に生物学的な方法」により得られた植物及び動物が特許対象外であることを明確化するために、EPC規則第27条及び第28条を改正しました。改正規則は、2017年7月1日に発効しました。
「本質的に生物学的な方法」とは、異種交配 (crossing) 又は淘汰 (selection)等の自然現象のみからなる方法を意味するとされています(EPC規則第26条(5))。

 

1.これまでの経緯

*下記URLをクリックして2017年2月の知財トピックスをご参照ください。

https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/3754/

(ア)これまで、EPOでは「本質的に生物学的な方法」は特許の対象外とされてきました(EPC第53条(b))が、「本質的に生物学的な方法により得られた」についての明確な規定はありませんでした。

(イ)2015年3月、EPO拡大審判部は、審決G2/12及びG2/13において、「本質的に生物学的な方法により得られた物それ自体は特許の対象となり得る」との判断を示しました。

(ウ)しかし、2016年11月3日付で欧州委員会通知が公表され、そこで、「本質的に生物学的な方法により得られた物」それ自体も特許の対象外とするべきとの見解が示されました。つまり、欧州委員会通知では、EPO拡大審判部の判断と逆の見解が示されました。

(エ)これを受け、2016年12月12日に、EPOは、「本質的に生物学的な方法により得られた植物又は動物の発明」に関して、審査部及び異議部での手続を停止する旨を公表しました。

  1. 今般の規則改正

(ア)2017年6月30日、EPOは「本質的に生物学的な方法」により得られた植物及び動物も特許対象外であることを明確化するために、EPC規則第27条及び第28条の改正を公表しました。

(イ)改正EPC規則第27条及び第28条(仮訳)は、下記の通りです(下線部が改正箇所です。改正された箇所については英語条文も併記します。)

EPC規則第27条: 特許を受けることができる生物工学的発明

生物工学的発明は、それが次の事項に関するものであるときも、特許を受けることができる。

(a) 生物学的材料であって、それが以前に自然界において生じていた場合であっても、自然環境から分離されているか又は技術的方法の使用によって生産されるもの。

(b) 規則第28条(2)の規定に反しない限り、動物又は植物。ただし、その発明の技術的実行可能性が特定の植物又は動物の品種に限定されないことを条件とする。(without prejudice to Rule 28, paragraph 2, plants or animals if the technical feasibility of the invention is not confined to a particular plant or animal variety)

(c) 微生物学的若しくはその他の技術的な方法又は当該方法の使用によって得られる生産物であって、植物若しくは動物の品種以外のもの。

EPC規則第28条:特許性の例外

(1)EPC第53条(a)に基づき、欧州特許は、特に次に関する生物工学的発明には付与されない。

(a) ヒトをクローン化する方法

(b) ヒトに係る生殖細胞系の遺伝子的同一性を変更する方法

(c) 工業目的又は商業目的でのヒトの胚の使用

(d) 動物の遺伝子的同一性を変更する方法であって、ヒト又は動物に対する医学上の実質的な利益がなく、その動物に苦痛をもたらす虞があるもの及び当該方法から生じる動物

(2)EPC第53条(b)の下、欧州特許は、本質的に生物学的な方法のみにより得られた植物又は動物に関しては付与されない。(Under Article 53(b), European patents shall not be granted in respect of plants or animals exclusively obtained by means of an essentially biological process.)

(ウ)改正後のEPC規則は2017年7月1日に発効し、同日以降に出願された欧州特許出願及び係属中の欧州特許出願、並びに既存の欧州特許に適用されます。また、停止されていた審査・異議申立手続も順次再開されています。