【日本】TPP11協定発効に伴う改正特許法の施行-期間補償のための特許権の存続期間の延長制度

2019年05月NEW

2018年3月8日に署名された「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(TPP11協定)が2018年12月30日に発効しました。これに基づく改正特許法の施行により、期間補償のための特許権の存続期間の延長制度 (改正特許法第67条第2項及び第3項等) が新たに導入されました。
本制度の概要につきましては、弊所知財トピックスの2017年4月掲載分でもお知らせしております。
https://www.saegusa-pat.co.jp/topics/4015/

  1. 新たに導入された特許権存続期間延長制度の概要
    TPP11協定では、特許の付与において不合理な遅延が生じた場合、期間補償のための特許権の存続期間の延長制度の導入が義務づけられています。これに応じ、特許権の設定登録までに一定の期間を要した場合に、権利期間を補償することができる制度が導入されました。

    (1) 期間補償の対象
    特許出願の日から5年を経過した日又は出願審査の請求があった日から3年を経過した日のいずれか遅い日(以下「基準日」といいます)以後に、特許権の設定の登録があった場合に、延長登録の出願により所定の期間について特許権の存続期間の延長を求めることができます(改正特許法第67条2項)

    (2) 延長が可能な期間の計算
    延長が可能な期間は、基準日から特許権の設定の登録の日までに相当する期間から、特許庁の責めに帰さない理由により経過した期間及び審判・裁判の期間等の特許出願に係る手続や審査に要した期間以外の期間を控除した期間です(改正特許法第67条3項)。

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    出典:産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会
    第13回 審査基準専門委員会ワーキンググループ
    配付資料1:特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準の改訂について
    http://www.jpo.go.jp/resources/shingikai/sangyo-kouzou/shousai/kijun_wg/document/13-shiryou/10.pdf

    (3) 適用される出願: 2020年3月10日以後の特許出願
    TPP11整備法附則第2条第3項は、「施行日又は環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定が署名された日から二年を経過した日のいずれか遅い日以前にした特許出願に係る特許権の存続期間の延長については、新特許法の規定にかかわらず、なお従前の例による。」としています。この条文中の「施行日」は2018年12月30日であり、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定が署名された日から二年を経過した日」は2020年3月9日ですので、2020年3月9日以前にした特許出願には、改正前の特許法第67条が適用されます。言い換えますと、期間補償のための特許権の存続期間の延長制度は2020年3月10日以後の特許出願に適用されます。

    (4) 延長登録出願の期限
    延長登録出願は、原則として、特許権の設定の登録の日から3月以内に行う必要があります(改正特許法第67条の2第3項)。 この出願を行った場合、存続期間の延長がなされたものとみなされます(同条第5項)。 この点は既存の存続期間の延長の規定と同様です。 なお、この制度は、改正前特許法第67条2項や第67条の2等の医薬品等の特許権の存続期間延長制度とは異なるものです。従って、医薬品等の特許権の存続期間延長制度と併用することも可能です。

    特許庁は、2023年度までに、権利化までの期間を平均14月(2017年度の実績は平均14.1月**)とすることを目標に掲げていることから、実際に特許権の存続期間の延長が認められることはほとんどないものと思われます。
    **出典:平成29年度に特許庁が達成すべき目標に対する実績 (下記URLのスライド13)
    http://www.meti.go.jp/shingikai/others/seisaku_hyoka/pdf/201809_03.pdf