商標権の利用のしかた

1.譲渡

2)商標権の譲渡

商標権の譲渡は、その指定商品または指定役務が2以上あるときには、指定商品または指定役務ごとにすることができます。

1997年3月31日までは、類似商標の商標権の分離移転や類似関係にある商品・役務にかかる商標権の分離移転は商標法で禁止されていました。しかし、現行法では、このような譲渡の規制が解除されて、禁止されていた形態の譲渡を含め、商標権の譲渡は権利者の意思により自由にできるようになりました。

商標権の譲渡には、商標権を他社に全部譲渡するものと一部譲渡するものとがあります。

(1)商標権の全部譲渡

商標権の全部譲渡とは、1つの商標権の指定商品のすべてを一括りにして他社に譲り渡すことをいいます。
譲渡の対象となる商標権と類似する別の商標権が自社に存在するかどうかに注意を払われることがたいへん重要です。


Ⅰ 類似関係がない場合
簡単です。対象となる商標権を適切かつ合理的な条件で譲り渡すことだけを考えれば充分だからです。

Ⅱ 類似商標の商標権の分離譲渡
複雑です。類似する商標権の1つを自社に残し、別の1つを他社に譲り渡してしまいますと、自社の残った商標権の登録商標をやや変化させた表現の態様で使うことができなかったり、類似する商標を新しく採択するときに商標権の取得ができなかったりすることになります。

次の図は、甲が当初所有していた2つの商標「ジョア」と「joie」について、1つの商標「joie」を他社である乙に譲渡する場合を示しています。

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2)商標権の一部譲渡

商標権の一部譲渡とは、指定商品の一部分についてのみ他社に譲り渡すことをいいます。
現行法は、自社に残る指定商品と他社に譲り渡す指定商品とが類似している場合(Ⅱの場合)でも、一部譲渡が認められるようになっています。この場合には、前のページの類似商標の商標権の分離譲渡の場合と同じく複雑な状況になりますので、弁理士にご相談ください。
ここで、商品商標にかかる商標権の一部譲渡について具体的にご説明します。
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