著作権について-(1)

  • 今回からいよいよ最終の課題に入ります。最近特に皆様の関心を呼ぶようになったのが、著作権についてです。ただ、著作権といっても、他の知的財産権と違って、その権利の種類および幅が広く複雑なため、何が著作権なのか、内容および実態がよくわからないのではないでしょうか。よく、耳にするのが、小説や音楽で他人の文章や楽曲を盗用したとか、ビデオや音楽の海賊版が出回っているとか、カラオケで曲を使用する場合に著作料を支払っていないとか、ある有名な画家が外国の画家と全く同じ構図の絵を作成し、著作権の侵害有無が問題視された等という話題ですね。しかし、他にも皆様に直接関係する問題が種々発生してきております。そこで、今回は、皆様がビジネスや研究活動を展開する上で関わってくる問題をかかげ、ご説明して参りましょう。

  • 最近よくご相談を受けるのが、会社のHPで顧客向けのサービスの一環としてある特定の課題(当該会社のビジネスにも関連)に関する論文や学説や情報をデータベースとして載せる場合に著作権との関連で問題はないかとか、ビジネスに関連したシステムを考案し、データベース化したものを、第三者に使用させる場合の契約について問題はないかとか、著作権の管理団体から社内外での文献の複写および使用について、複写料の支払いを要求されてきている、どのように対応したらよいのかとか、社内の研究者が論文を発表するが、当該論文についてはどこが権利を取得できるのか(本人か、会社か、論文を掲載する学会誌か)等、本当に興味深い課題が多くなっております。

  • 一口に著作権といっても、特許権等と違って、支分権が多数あり、かなり複雑となっております。しかし、皆様のビジネスや研究に関連するのは上記のようなご相談内容の範囲でのトラブルが多いため、それに焦点を絞ってご説明して参りましょう。

    【事例1】 文献等をデータベース化するにあたって注意すべき点は何か

    (1)企業イメージを高めるためにあるいは純粋な学術的な目的から、ユーザーや他の研究者の参考になるような情報(文献等)をデータベース化して自己のHPに掲載したいという企業や大学(研究室)があります。本来なら、いずれも営利目的ではないため、著作権の問題とは切り離して考えるべきでしょうが、著作権法では、権利行使の対象から除外される範囲を限定しており(著作権法30条~42条の2)(制限列挙)、当該ケースは権利除外の範囲には入っておりませんので、第三者の文献をそのままデータベース化して公開することは明らかに対象文献について著作権の侵害(複製権の侵害)を形成することになります。
    従って、文献そのままをデータベース化して使用する場合には、それぞれの文献の著作権者の許諾を得る必要があります。しかし、実際は、著作者が著作権者とは限りませんので、文献毎に実際の著作権者(この場合には、複製権を保有している者:最近は著作権管理事業法に基づき、著作権者に代わって利用料を徴収するような管理団体なる仲介業者がいて、文献を管理している場合もありますが、全体の約30%にしかすぎません。)を見つけ出し、使用許可を得なければなりません。物理的にこのような手間隙をかけることは無理なケースが多いため、このような工程を踏むことはお勧めできません。  
    (2)そこで、当該企業や機関の希望を最低限実現できる方法として、「引用」の形態をとることをお勧めしております。   
    文化庁が公表している、許諾不要かつ無償の利用方法としての「引用」の条件は、
    既に公表されている著作物であること
    公正な慣行に合致すること
    報道、批評、研究などの引用の目的上「正当な範囲内」であること
    引用部分とそれ以外の部分の「主従関係」が明確であること
    カギ括弧などにより「引用部分」が明確になっていること
    引用を行う「必然性」があること
    「出所の明示」が必要(コピー以外はその慣行があるとき)
    となっております。また、著作権法32条にも引用について触れられておりますが、いずれも、大変不明瞭で漠然としておりますので、判例などで解釈されている趣旨をご説明しておきましょう。
    「公正な慣行に合致する」とは、具体的には、a)他人の著作物を利用する必然性があること、b)他人の著作物を利用することによって人格侵害が発生しないこと、c)公正な効果があることと言われております。
    それでは、上記a)~c)について詳細に説明していきましょう。
    a)他人の著作物を利用する必然性があること→自己の著作の目的上、他人の著作物の引用を必要とし、かつ、それが客観的に正当視される範囲といえます。例えば、美術の著作物を引用する場合には、その美術の著作物の研究ではなく、引用する側の著作物に触れる者に鑑賞させることを目的とするような場合には正当視することはできないとされております。
    b)人格侵害が発生しないこと→引用は原文のままだけでなく要約として引用することも認められますが、その場合には、引用する著作物の触れる者に、それとわかる方法で引用するか、「中略」というような明確な表示をする必要があります。改作と思われるような引用の仕方は著作者の同一性保持権、改作利用権の侵害となるため、注意が必要です。
    c)公正な効果があること→外見上、正当な引用として認められるやり方をしながら、内容的には原著作物の論旨が歪められている場合があります。例えば、引用される著作物の真の内容について、決定的な言葉や文章を欠落させることによって生じるものであります。このような引用は、原著作者の人格を侵害するため、引用者は原著作者の思想、感情が新著作物の触れる者に誤解をされない方法で引用しなければなりません。
    「引用の目的」とは、あくまで、「報道、批評、研究」の目的がなければならないとされておりますが、本件事例のような場合でも、公益性が高い目的を掲げているため、問題はないと思われます。
    「正当な範囲」とは、a)被引用著作物の分量→つまり、引用する部分は一部分を抜き出すことをいいます。b)引用著作物と被引用著作物の関係→つまり、主従関係を明確にするということです。この両者が特別な努力なしに見分けられる程度に明瞭分離性があることおよび他人の著作物から引用した部分を取り去ってもなお、引用する側の著作物が主体性をもった独立した著作物であることが要求されます。
    「出所の表示」は著作権法48条にも規定されておりますが、著作者の名前、著作物の名前、出版社、出版時期などを明記すれば足りるでしょう。
    (3)結論として、許諾を得ることなく、最低限の目的(当該データベースに触れる者に参考資料として提供し、提供する課題の研究等の手助けになることを目的とする)を達成するための方策としては、
    文献の「要旨」および「キーワード」を作成し、当該文献の「出所」を明確に記載したデータベースを構築する。
    ただし、「要旨」および「キーワード」は引用者が自分流の解釈で作成するのではなく、あくまで、被引用著作物の趣旨に沿ったものとすること。
    当該データベース構築の趣旨はあくまで、これに触れる者に対する参考資料の提供であり、自社のプロパガンダは一切含まれないことを明確に打ち出すことが必要。

    【事例2】 データベース化したビジネスプランを第三者に使用許諾する場合の注意はなにか

    (1)ビジネスプランに関連するデータベースについては、最近ではビジネス特許を取得することもできますが、本件のケースでは、著作物として第三者に使用させることを目的としたものです。最初に見せていただいた原案では、著作物の特定は明確にされておりましたが、その使用の態様については、単に「当該著作物の使用を許可する」というだけで、他の要件については一切触れておりませんでした。担当者に聞くと、実際上、著作物およびそれに基づく著作権について十分な認識や知識がないとのことで、何が欠けているのか理解できないようでした。      
    そこで、データベースなどの著作物の使用許諾については、下記の内容の特定が必要になります。
    本件の場合には、データベースをフロッピーで使用者に渡し、それを使用する許可を与えるというものですが、実際上は、これを再利用可能な状態で端末機に蓄積する行為(ダウンローディング)は、データベース著作物の一部複製として扱われ、著作権者の複製権が及ぶことになりますし、当該著作物をハードコピーの形式にアウトプットする行為も著作物の複製にあたります。更に、端末器から複数の端末器に送信し、そこで使用する行為も複製にあたりますので、一概に使用といってもどこまで許可するのかを明確に規定し、範囲を定める必要があるのです。
    また、著作物の使用許可となっておりますが、当然に当該著作物については、著作権が発生し、上記にも記載しましたとおり、著作権には種々の支分権がありますので、単に、著作物を使用するというのではなく、著作権の使用許諾という趣旨も合わせて発生することを覚えておいて欲しいと存じます。
    当該データベースやコンピュータープログラムはビジネス特許としても保護の対象となりますが、特許出願すると公開されるため、当該技術の盗用の危険性があり、更に盗用されても利用実態が明らかになりにくい分野であるため、ノウハウ的に保有し、著作権の形で使用許可するという形態をとる場合が多いようです。

(この章続く)

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