-その(4) ライセンス契約について-(7)

  • 今回は、アジアの中で、気になる存在である中国、インド、韓国における契約に対する規制等についてご説明していきましょう。

(1)中国
1)中国における状況変化
従来は技術導入のみが規制の対象となっていましたが、2002年の1月から、「技術輸出入管理条例」が施行されることになり、技術輸出と技術導入の双方が規制の対象となりました。また、今回の改正により、従来の「許可制」に変わり、「禁止」、「制限」、「自由」の3種類のどれに入るかによって対象規制が変わる体制に変化してきております。従って、以下の技術に該当しない場合には、「自由」となり、当事者の契約のみで効力が生じ、商務部へ登録すればよいことになります。

禁止対象技術:直接的に中国の国土座標を示す星定位技術、通信機密保持技術、コンピューターネットワークの安全および機密保持技術、漢方薬資源又は製造技術の一部
制限対象技術:バイオテクノロジーや化学合成による薬物製造技術のうち先端的なもの、宇宙関係技術等
中国のバイオ技術は優秀であり、全世界のバイオ技術に関する出願数をみても、中国は日本を抜いて、米国と肩を並べるほどになってきております。
従って、中国との共同研究契約も増加しておりますし、中国に研究開発センターを開設する外国の企業も増えてきており。このため、2000年4月18日に「外商投資による研究開発センター設立に関する問題の通知」が対外経済貿易合作部(現在では商務部)から公布され、設立の要件が決められております。ただし、当該研究開発センターを日本企業が投資して設立しても、当該法人は中国法に基づく中国法人であるため、日本本社への権利移転や技術供与は上記の「技術輸出」に該当すること並びに規制の対象技術かどうかにより、難しい局面もありますので、注意が必要です。
2)技術輸出入契約の効力発生要件とは
成立した契約は、商務部に登録(オンライン登録のみ)する必要がありますが、契約の効力発生要件とはなっていません。従って、上記禁止又は制限技術でない場合には、両当事者により適法に契約を締結した時点が効力発生日といえます。

ただし、商務部への登録は、特許を受ける権利又は特許権の渉外移転を特許局に登録する前提として不可欠であり、又、送金および契約に伴う機械、設備等の通関でも必要となりますので、中国企業とのライセンスに関する契約は必ず登録するように注意してください。

上記に述べた禁止技術については、当然ながら輸出入はできません。制限技術については、まず、事前に商務部に許可を申請する必要があり、審査の結果、許可意向書の発給を受けた後、契約を締結し、当該契約書について、再度商務部の契約審査を受けて許可を取得しないと実際のライセンス契約は発効しません。

3)契約条項について注意する点
ライセンサーの保証義務
ライセンサーは、以下の保証を必ずする義務を負わされていますので、保証しない場合には、商務部でチェックの対象となります。次の項で述べる制限条項の排除義務とあわせて、契約条項を検討する場合に注意をしてください。
自己の技術についての保証(合法的な所有者、譲渡又は許諾する権利を有していること)
提供技術自身に関する保証(完全かつ問題がないこと、有効かつ約定した目標達成可能であること)
権利侵害に対するライセンサーの協力義務(ライセンシーが第三者から権利侵害の訴えを起こされた場合には当該障害を排除するための協力)
ライセンシーが対象技術(特許等も含めて)を実施することにより、第三者の合法的権益を侵害した場合には、ライセンサーが責任を負うこと→これはライセンサーにとっては重要な事項ですので、必ず、責任の範囲を契約上明確にしておくことが大切です。
制限条項の排除
日本と同様に独占禁止法関連(中国では契約法329条)の違反となるような以下の制限条項は規定できません。
提供技術に不可欠でない技術、原材料、サービスの購入等を含む付帯条件を強要すること
特許満了後又は特許無効宣告後の技術について実施料の支払等を強要すること ・技術改良を制限し、又は改良技術の使用を制限すること
類似技術又は競合技術を第三者から取得することを制限すること
原材料、設備等の購入経路等について合理的でない制限をすること
生産数量等について合理的でない制限をすること
製品の輸出ルートについて合理的でない制限をすること
秘密保持義務違反
日本の不正競争防止法に該当する「反不正当競争法」の10条に「営業秘密」に関する規定があり、それに違反する(営業秘密の漏洩、使用、他人に使用させること等)と、差止め、損害賠償、行政罰等の対象となるため、気をつけましょう。
4)中国における研究開発センターの設置について
日本への技術移転
中国における日本企業が設置した研究開発センターで発明等の技術が生じた場合に、当該技術を日本企業に移転する場合には、原則として「技術輸出」に該当するため、「技術輸出入契約管理条例」に基づく手続きが必要となります(自由技術に該当する場合には、商務部か当該センターが所属する地方機関に登録申請する)。

特許出願
平成21年10月1日より特許法の一部が改正され、特許法20条で規定されていた、国内第一出願主義が排除されることになった。 このため、研究開発センターで生まれた発明を出願するにあたっては、日本を第一国として出願できるようになった。

中国の大学等研究機関との共同研究(研究委託も含む)で注意すること
中国における研究機関の権利所属については、最低限でも共同所有とする傾向が強まっています(中国側が日本企業の単独所有には応じないケースが多い)。ただ、共同所有となっても、注意しなければならないのは、最高人民院「技術契約紛争案件の審理に法律を適用する問題に関する解釈」の21条です。同条は、
→実施条件を具備していない大学等は第三者に1の通常実施権を付与する権限があり、共有者の権利である適法な自己実施と同視される。

(この章続く)

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