-その(4) ライセンス契約について-(8)

  • 前回に引き続き、今回は、アジアの中で、インドおよび韓国における契約に対する規制等についてご説明しましょう。

(2)インド
1)契約の登録
インドでは、明示的な特許に関する契約(権利譲渡、ライセンス、譲渡抵当権の設定、その他何らかの権利設定)については、その条件を具体化する文書の形で記載され、特許庁に登録することが効力発生要件になっていますので、注意しましょう。
ライセンス契約の登録にあたっては、特許局長は、ライセンス契約の期間、条件を審査するだけでなく、契約条項が外国為替規制、消費者保護規制、独占的・制限的取引慣行規則法等も遵守したものになっているかの検討も行いますので、他の国に比べて規制は厳しいとみるべきでしょう。

2)ライセンス契約における制限規定(違法)
特許法140条では、違法となる制限規定について列挙しています。
ライセンサーが、ライセンサー又はその指定する者以外の者から、その特許製品又は特許工程で造られた製品以外の製品を入手することを禁止し、若しくはその方法又はその程度の如何を問わず、そのライセンシーの権利に制限を加えること
ライセンシーが、特許製品又は特許工程で造られた製品以外の製品で、ライセンサー又はその指名する者により供給されない製品を使用する権利を禁止し、若しくはその方法又はその範囲に如何を問わず、そのライセンシーの権利に制限を加えること
特許工程以外のいかなる工程をもライセンシーが使用することを禁止し、又はその方法又はその範囲の如何を問わず、その使用に制限を加えること
排他的グランド・バック、特許の有効性に対する異議申立ての抑止、強制的包括ライセンスの許諾を規定すること
3)ライセンス契約における適法な制限
以下のような制限は違法にならないとされております。
地域の制限→ライセンス許諾テリトリーを限定する場合
事業の制限→ノウハウの利用において、ライセンサーがライセンシーの活動(製造、流通、販売等)について何らかの制限を課すことは可能
応用の制限→ライセンサーは、ライセンシーに対して、許諾技術を一定の分野(特定の産業分野、一定のタイプの生産に限定等)に限定することは可能
期間の制限→ライセンシーが抵当権者として、又は特許その他の権利に対して他の方法で権利を所有している場合には、契約終了の条件にもよりますが、ライセンシーによるノウハウの利用は一定期間に限定することが可能
4)実施料支払に関して注意すべき規制等
従来は、下記のような規制が敷かれていたが、インド政府は、外資からの更なる技術移転の促進を目指して、2009年11月5日に、実施料の上限規制を撤廃する方針を発表し、その後同年12月16日付けで、インド政府商工省から、プレスノート8号が発行され、同日付で正式に実施料の上限が撤廃された。
これにより、2009年12月16日以降は、日本企業を含むインド非居住者は、一括払い、継続払いを問わず、インド内国社からの実施料送金、支払受領について、上限規制を受けなくなった。
ただし、全くのフリーハンドではなく、プレスノート8号の3項では、実施料上限が撤廃されるかわりに、技術提携や商標使用について、事後届出制度が設けられることが予定されている。

 【参考】 撤廃された上限規制の内容
海外への対価送金に関する規制
(特許・ノウハウ等)
税引き後 200万米ドルを越えないこと
国内売り上げの5%及び輸出額の8%まで
10年間に売り上げの8%の支払合計
(実施料支払期間に関する制限はない)
(商標)
輸出額の2%及び国内売上の1%を限度とする
(3)韓国
1)対象技術(発明)の登録
韓国の法体制はほぼ日本と同様であると考えられますので、米国等と違って、日本企業としてはやりやすいと思われます。
ライセンス契約についての規制も日本とほぼ同じ体制です。ライセンス対象が特許の場合には、登録が効力発生要件となっている専用実施権も認められています(特許法100条)。つまり、日本と同様に契約上で独占的実施権を許諾されていても、それが専用実施権でない場合には、独自に侵害差止請求権等を行使することができませんので、ライセンシーの場合で、独占の権利の許諾を受けた場合には、それを専用実施権として要求するかどうかを検討する必要があります。

2)公正去来法(日本の独占禁止法に該当)
当該法による規制は日本とほぼ同じであり、不公正かつ不当な制限を設けると公正去来法違反になります。
国際契約上の不公正去来行為等の類型及び基準」では、以下のような条項は不公正な取引に該当するとしております。
・ 原材料・部品等の購入先の制限
・ 輸出地域の制限
・ 取引相手の制限
・ 競争技術・製品の使用又は取扱制限
・ 特許等の権利消滅後の使用の制限
・ 販売価格の指定
・ 並行輸入の妨害
・ 技術改良及び研究開発の制限
・ 改良技術の移転等(独占権のリターン)

3)ライセンス契約違反に対して求めうる措置
損害賠償請求:
一方の当事者が契約違反をした場合、他の当事者はその違反により蒙った損害に対して、損害賠償請求をすることができます。当該訴訟は、一般民事訴訟手続きにより審理されます。
侵害差止請求:
ライセンス契約が解約された後も、ライセンシーが無断で対象特許を実施している場合には、ライセンサーは当然、ライセンシーに対して対象特許の実施(対象製品の製造及び販売)等を差止を請求することができます。
損害賠償と合わせて又は単独で本案訴訟を提起する場合もあります。

以 上 (この章完)

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