(5) 先願の発明であること(特許法第39条)

 特許制度は、発明を公開した代償として、特許権者に一定期間独占的な排他権を付与するものです。したがって、一発明について二以上の特許権を認めることは制度趣旨に反します。また、同一人が異なる時期に同一発明について複数の特許出願をして特許権を取得すると、特許権の存続期間が実質的に延長されることになります。
 このような弊害を排除するために、特許法は、一の発明について複数の特許出願があったときに最先の出願人のみに特許を付与する「先願主義」を採用しています。これは、いち早く発明を公開しようとした者を保護しようという特許制度の目的にもかなっています。

 すなわち、同一の発明について異なった日に二以上の特許出願があったときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができます。ここで、最先の特許出願人とは、最先の特許出願に関する限りにおける特許出願人であり、最先の特許出願人が同一の発明について後日再び特許出願をした場合においてまで特許を受けることができるということではありません。
 また、同一の発明について同日に二以上の特許出願があった場合、特許出願人の協議により定めた一の出願人のみが、その発明について特許を受けることができます。協議をしたにもかかわらず協議が成立しなかった場合や、相手方が協議に応じない等の理由で協議をすることができなかった場合には、いずれの特許出願人も、その発明について特許を受けることができません。
 以上のように、同一の発明について、先に他人に特許出願されてしまうと特許を受けることができなくなりますので、発明をしたらできるだけ早く特許出願することが大切です。

特許制度のあらまし:目次